成約インタビュー INTERVIEW
買収企業インタビュー
投資業

130店舗に倍増! 国内有数の美容サロングループを生んだ、投資ファンドによる2社同時M&A

譲渡企業
買収企業
業種
理美容業
投資業
M&Aの目的
経営基盤の強化
投資先のバリューアップ

近年では非上場企業に投資するPE(プライベート・エクイティ)ファンドが、大中規模の美容サロングループへ投資する事例が増加しています。エクイティ投資を中心とするニューホライズンキャピタル株式会社(以下、NHC)では、2021年9月、美容サロン運営企業のフレイムスグループ(株式会社フレイムス、株式会社トレッドル、株式会社アッド)とリタ株式会社(以下、リタ)の同時M&Aを実施しました。
両社の持株会社としてBIQREA(ビクレア)ホールディングス株式会社(以下、BIQREA)を設立したNHCは、多様な経営支援を同社に提供。経営基盤の強化とシナジー効果によって両社ともに成長を遂げています。ですが、実は「当初はあまり積極的でなかった」そうです。なぜ、そのようなスタンスからM&Aに踏み切ることになったのか? その理由について、NHCの佐藤氏と中村氏、漁野氏にお聞きしました。

左からマネージャーの中村氏、最高財務責任者の佐藤氏、マネージャーの漁野氏

社会全体の価値の最大化がNHCの目指す投資

国内企業のさらなる活性化を目指し、2002年に創業したNHC。国内の中堅中小企業に対する投資は100を超え、現在では年間数百件もの投資案件を検討しています。投資対象はIT企業から飲食業まで多岐にわたりますが、とりわけ地域経済において価値を発揮している企業へ精力的に投資しています。

投資ファンドと聞くとスマートなイメージを抱く方も多いでしょう。しかし、NHCの投資は非常に情熱的。「意義ある投資で新たな地平へ」といったパーパス(目的・存在意義)を実現するため、対象企業に寄り添った投資を徹底しています。

「私たちが介在することによって、今までの延長線上ではない新しいものや、社会的に意義があるものを作っていきたい。その想いが、私たちの投資活動を支える“柱”になっています」(佐藤氏)

同時に「社会全体の価値を考慮する」「常に挑戦と変化を肯定する」「意思と情熱を追求する」「共に悩み、共に走りつづける」「より多くの人生に貢献する」という5つのフィロソフィー(行動規範)をスタンスに掲げて、投資を実践しています。対象企業のオーナーや経営層とは事前に投資後の事業運営方針について十分に話し合い、双方が納得できない場合は決してM&Aを実施しないそうです。

投資後の会社運営も、株主だからと一方的な意思決定は行いません。数年後にイグジットする際も、企業に残る経営陣としっかり協議し、企業の存続と発展に有益と考えられる方法を選択します。企業とそこで働く方々が「NHCの投資を受けて良かった」と思えるように心がけているといいます。

「私たちは、投資によって企業とそこで働く方々の人生を豊かにしたいと本気で考えています。そのために、投資先の企業には私たちのパーパスとフィロソフィーに共感してくれることを望んでいます。投資ファンドとして利益をあげることは大前提ですが、利益を得られればそれで良いというわけではありません。事業を通じて、社会を良くしてくれる企業への支援。それが、NHCの投資の特徴だと思います」(佐藤氏)

投資前には相手の経営者にNHCのパーパスとフィロソフィーを提示して 
意思疎通を図り、互いに良きパートナーとなれるかを確かめる

同時M&Aの懸念点は両経営者のリレーション

NHCでは近年、中堅中小企業の事業承継と成長支援を強力に推進してきました。そんな中、2021年2月、オンデックから埼玉県を中心に展開している美容サロン運営企業の2社同時M&Aのオファーを受けました。

「当時は新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言の期間中。先行き不透明な状況での投資には当初ためらいもありましたが、オンデックさんに収集いただいた資料を分析する中で、それも払拭されました。コロナ禍以前に東京都心の美容サロンに通っていた方が、緊急事態宣言を受けて地元の美容サロンに通うようになり、宣言が明けてもそのままリピート顧客となっているケースが多いことが判ったのです。コロナ禍の影響は、両社にとってむしろポジティブに働いていました」(中村氏)

市場の動向を反映したように、フレイムスグループ、リタともに業績は増収増益を継続。リピート顧客を多く抱え、安定した顧客基盤を築いていました。また、両社は埼玉県川口市から大宮市周辺に集中して出店しており、ドミナント戦略(一定の地域に絞って出店することで、地域内シェアの拡大を狙う経営戦略)のノウハウを保有。近隣沿線への展開など、さらなる成長余地もありました。

投資前に実施した面談においても、フレイムスグループの舟津隆一社長とリタの高橋宙社長の事業意欲やバイタリティに魅力を感じた中村氏。両社の成長性を感じましたが、実は当時は、NHCの社内での反応は前向きではありませんでした。

2社同時M&Aにおいては、両社の経営者が同じ方向を向いて事業を発展させてくれることが重要です。オンデックからは「舟津社長と高橋社長は友人同士で、経営に対する考えや方針も似ている」と聞いてはいたものの、両社長の関係性を不安視する意見があったそうです。

中村氏をはじめNHCでは、両社長間のリレーションを見極めるため、クロージング前から両社長と密にコミュニケーションをとるように心がけました。さらにNHCとオンデックは、舟津社長と高橋社長を交えた意見交流会を何度も開催。互いの本心を語り合うことで、意思の疎通を図りました。

「コミュニケーションを通して、懸案であった両社長の関係性に問題がないことがわかりました。また、その過程で感じた両社の魅力を社内で共有するうちに、自然と風向きが変わっていきました。両社の持つ可能性が伝わったのだと思います」(中村氏)

検討中、両社の美容サロンに髪を切りに行ったという中村氏。 
「両社のスタッフから社長への信頼を耳にしたことも投資を進めたいと思える要因だった」

同時M&Aを決めた理由は「NHCのパーパス・フィロソフィーとの一致」

国内の投資ファンドとして豊富な実績を誇るNHCであっても、2社同時M&Aの前例は多くはありません。事前に信頼関係を確認できたとはいえ、そうした投資に乗り出すことができた決め手はどこにあったのでしょう。

「両社の成長性に加え、その社会的意義の大きさが決め手となりました。フレイムスグループとリタは新卒採用やスタッフ教育に力を入れ、美容師の安定的な雇用と長期的なキャリアの形成に取り組んでいました。産休・育休制度の採用など女性が働きやすい職場づくりにも積極的。加えて、アイラッシュサロンやカラー専門店などレギュラーサロン以外の事業も手がけることで、スタッフが自身の志向や生活スタイルに合った業態で働ける。美容師が生涯を通じて同グループで活躍し続けられる環境を構築していたことに大きな魅力を感じました」(中村氏)

昨今では、業務委託の美容師によって店舗を運営する企業が増えています。もちろん、それ自体は悪いことではありませんが、地域の雇用を支える両社の取り組みをNHCは高く評価。地域経済において価値のある企業であることが、投資を決定するキーポイントとなったそうです。

また、今回のM&Aによって単独では実現しえない成長が期待できたこともポイントでした。従来は社労士・会計事務所に外注していたバックオフィス機能を、NHCの経営支援によって内製化することで、間接部門に係るコストの適正化や経営管理機能の強化を図ることができます。また、ノウハウの共有などによって採用や教育も高度化できるなど、多様なシナジー効果が見込まれていました。

さらに、美容サロンを運営する企業の投資案件が増加傾向であることも、両社への投資を決断する後押しとなりました。将来、ほかの企業への投資を通じて、両社とグループを形成してゆく「ロールアップ戦略」も展開すれば、より加速度的に成長を推進できると想定されたのです。

「投資後もさることながら、そもそもフレイムスグループとリタが同時M&Aによって同じ資本に入ること自体が大きな意味を持つと、私たちは考えていました。両社は良好な関係にありましたが、資本が違う以上は競合企業。それが、M&Aを通じて同じ資本を受け入れることで仲間になり、切磋琢磨しながら互いに成長できる好循環を生み出せるようになることも、投資を決めた理由でした」(佐藤氏)

成約インタビューvol.6

NHCの新しいロゴによるエントランスサイン

国内有数の美容サロングループの基盤は、舟津社長と高橋社長の理念

2社同時M&Aの結果、フレイムスグループとリタの持株会社として誕生したBIQREA。舟津社長と高橋社長を共同経営者とし、NHCから社外取締役として3名、社外監査役として1名が参画しています。グループ会社各社の経営管理機能を担い、グループ全体の経営を統括。事業はM&A以前と同様に各社が営みつつ、BIQREA内でのシナジー効果や全体の企画を創出する機関として機能しています。

シナジー効果も想定通りに創出され、NHCの追加投資を受けながらロールアップ戦略も展開中です。2022年7月には、全国各地でアイラッシュサロン「EYELA」(アイラ)をフランチャイズ展開する「AOE Create」(エーオーイー・クリエイト)へ投資。直営店舗が中心となるフレイムスグループとリタがフランチャイズのノウハウを得ることで事業拡大が促進されました。

さらに、2023年には⼤阪府を中⼼に美容サロンを運営する「MASHU」(マッシュ)とも資本業務提携。事業エリアの拡大だけでなく、美容師の採用強化や、経営リスクの低減などのシナジー効果が期待されています。

「AOE CreateとMASHUがグループに加わったことで、BIQREAグループの規模は非常に大きくなりました。BIQREA創立当初はグループ全体で64店舗でしたが、現在は直営店だけで約100店舗、フランチャイズ店舗も合わせると約130店舗まで増加しました(2023年5月現在)。美容業界において有数の規模のグループに成長できていると思います」(漁野氏)

当然、フレイムスグループとリタの事業はともに好調。店舗数の増加に伴って売上も伸びているだけでなく、両社が同じグループとなったことでよりスタッフ同士が互いを高め合う関係性になったそうです。

今後はさらに規模の拡大を続けながら、グループとして新しい業態や商品の創出、コストの効率化などシナジー効果の最大化を追求します。BIQREAグループ各社の経営の質が向上し、自力での成長も加速させることで、さらなる発展を目指していくそうです。

最後に、投資の成果を漁野氏に尋ねると「事業の拡大は順調」とのこと。一方で「今回の件が上手くいっているのは、舟津社長と高橋社長の経営手腕と理念によるところが大きいと考えています。両社長が持つ、美容師が生涯安心して働けるグループにしたいという強い想いがグループ全体に共感を生み、BIQREAという“輪”が大きく広がっているのだと思います」と答えてくれました。

漁野氏が言うように、BIQREAの快進撃の原動力がグループ各社の企業努力であることは間違いないでしょう。ただ、各社のエネルギーを束ね成長の推進剤となっているのは、NHCの投資と経営支援です。NHCの投資によって、BIQREAグループ各社は企業として新しいステージに飛躍。フレイムスグループとリタの2社同時M&AはNHCのパーパス通り、企業を“新たな地平”へ導く投資となりました。

フレイムスグループとリタの融和も順調に進展。 
スタッフからは「違う会社ではあるが、同じ方向を向いて進んでいる」という声も

COMMENT
オンデックからのコメント

2社同時M&Aには、「新規顧客の獲得」や「人材採用の強化」など多くのメリットがある反面、その真価を発揮するには企業同士の相性を見極めることが重要です。両社が同じ目標に向かって協働できなければ、満足な成果を得ることは難しいでしょう。本件では、舟津社長と高橋社長が美容師を大切にしたいという共通の想いを有していたこと、そして綿密なコミュニケーションによりその点を事前に確認できたことがポイントであったように思います。
 
NHCの佐藤氏からは「BIQREAの成功要因は、フレイムスグループとリタの同時M&Aでスタートしたことです。両社を母体としたからこそ、そこに共感する企業が現れてグループインしてくれたのです。両社の共通した組織風土やビジネスモデルを把握し、このスキームを企画・提案してくれたオンデックには感謝しています」との言葉をいただきました。
 
オンデックでは譲渡企業、譲受企業双方に寄り添ったコンサルティング・M&A支援を心がけています。事業の拡大や経営課題の解決策としてM&Aを検討しているなら、ぜひお気軽にご相談ください。
 
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