成約インタビュー INTERVIEW
譲渡企業インタビュー
小売業

社風を維持し成長を加速できたリユースモバイル企業と大手商社のM&A

譲渡企業
買収企業
業種
小売業
卸売業
M&Aの目的
経営基盤の強化
事業の拡大
成長戦略として、大手企業グループに編入されるM&Aを検討したいが、それでは経営の主体性を失ってしまうのではないか――。あるいは、大手企業グループと業務提携契約を結びたいが、それだけでは強固な取引・信頼関係は構築できないのではないか――。
そのような懸念をお持ちなら、資本業務提携という選択肢も一考に値します。少数持分の出資により、業務提携以上の強固な関係を構築できる一方で、経営の主体性も一定程度確保することができます。

スマートフォンをはじめとするIT機器の買取・販売を展開する株式会社イオシスホールディングスは、2024年4月、大手総合商社の丸紅株式会社との資本業務提携を発表しました。

リユースモバイル(中古スマートフォン)業界の雄が、イグジット、そして創業者によるMBOを経て、さらに大手商社と資本業務提携を実行した背景とは? 株式会社イオシスの創業者で、イオシスホールディングス代表取締役の中本直樹氏に、丸紅との資本業務提携に至る経緯と狙いを聞きました。
イオシス中本氏インタビュー1

株式会社イオシス 代表取締役会長 中本 直樹氏

スマホ上陸元年、いち早くリユースモバイル事業を開始

イオシスホールディングスは、リユースモバイル業界において圧倒的な知名度とシェアを誇るIT機器の買取販売大手、イオシスの持株会社です。イオシスは1996年に大阪で個人事業として創業。当初は主に中古パソコンを取り扱っていましたが、2008年に携帯電話事業を開始しました。

「長年、中古パソコンの買取・販売をメインに行っていたのですが、転機は2008年。前年にアメリカで発売されたiPhoneが日本に上陸して『これはすごいぞ』と(笑)。そこでスマートフォンの可能性に気付いて取り扱いを開始しました。当時は秋葉原でも中古スマートフォンを取り扱っていたのは珍しかったと思います」(中本氏)

いち早くスマートフォンの買取・販売業を開始した同社の業績は急拡大。その背景には、リユースモバイル事業の先行優位性だけでなく、同社独自の経営手法もありました。

同社では、従業員を「個性ある商売人」と捉え、各人が広い裁量を持ってサービスを実行するのが特徴。そこには、従業員が仕事を面白がることで、お客様にもリユース販売を通して、店舗で「面白い」と感じてもらいたいという中本氏の想いがあります。

「仕事は大前提として生活するために行うものですが、どうせやるなら面白く仕事をしたいですよね。従業員が仕事を楽しいと感じてもらうための工夫をしています。例えば、ゲームの仕組みを参考に、当社では業務範囲を少しずつ広げていけるようにレベルに合った課題を従業員たちに都度課したり、ロールプレイングゲームの主人公のように社内レベルを設定したりしてモチベーションを高める工夫をしています」(中本氏)

こうしたマネジメントにより、従業員は徐々に裁量を拡大しながら、楽しみつつ業務を遂行できます。個々人の裁量の広さは、接客面でも他社との差別化につながります。

イオシスでは、他社のようにスペックをもとにお客様に機器を提案するだけでなく、個々人の感性を軸に「お客様の雰囲気にお似合いです」といった親しみやすい声掛けが積極的に行われます。結果、お客様からも相談しやすい雰囲気が醸成されリピーターが増えていきました。

しかし、そんな業績好調の中でも「資金繰りへの苦労が絶えなかった」と中本氏は振り返ります。

「買取・販売というビジネスモデルの性質上、手元のキャッシュに余裕はなかったんです。事業の拡大のためには在庫・人・店舗を増やさなければならないため、支払いは増え続ける。いつかは外部資本を入れなければならないとずっと考えていました」(中本氏)

そうした理由から、IPOやM&Aの検討を始めた中本氏。カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(CCC社)への100%株式譲渡を決断したのは2014年でした。

イオシス中本氏インタビュー2

イオシスを愛する従業員のためMBOを決断

レンタルビデオ店「TSUTAYA」をフランチャイズで展開するCCC社は、当時、モバイル事業に注力していたことから、リユースモバイルの買取・販売に強みを持つイオシスに注目。

一方、中本氏も、CCC社の200店以上の実店舗ネットワークを生かした買取・販売ノウハウにシナジーを見出し、同社がイオシスの成長に最適なパートナーであると考え株式譲渡に至りました。

中本氏は株式譲渡後もイオシスに残り経営を主導。途中、2度の買収でスマートフォン修理事業を獲得するなど、事業と業績の拡大に貢献しました。CCCグループの中でも強い存在感を示したイオシスですが、2022年、思いもよらない事態が発生します。

「グループ内の合理化の一環で、イオシスの事業領域の見直しが持ち上がりました。正直、『それも仕方がないかな』という思いが頭をよぎったんですが、従業員の間には不安の声が上がりました。イオシスは、従業員一人ひとりを『個性ある商売人』として尊重し、独自の社風を大切にしてきた珍しい会社なので、再編によって社風が変わってしまったらと心配したんでしょうね」(中本氏)

従業員の想いに感嘆した中本氏は、イオシスを買い戻すことを決意。2022年にMBO(現経営陣による買収)を実施しました。

「MBOで株を買い戻したまでは良かったのですが、やはりイオシスの成長のために外部の資本やパートナーが必要であることは変わりませんでした。役員とともにIPOやM&Aを検討したのですが、IPOすると当然、社会の公器となり経営の自由度が低くなるので当社の社風と合わない。それでM&Aで新たなパートナーを探すことに決めたんです」(中本氏)

M&Aの実施にあたっては、スマートフォン修理事業の買収時に支援を依頼したオンデックに、再び支援を依頼。大手企業2社が買収に手を挙げました。その一つが今回資本業務提携に至った丸紅でした。

イオシス中本氏インタビュー3

成長加速と社風維持、両立を狙った資本業務提携

候補企業2社と交渉を行うことになったイオシス。
デューデリジェンス前の早い段階から役員も交えて、計10回ほど面談を行いました。

中本氏は丸紅が、イオシスの企業文化を受け入れてくれたと振り返ります。

「丸紅さんが、私たちの大事にしている社風はそのままでいいと言ってくれたのがうれしかった。そして、マイノリティでの出資という提案も結果的に良かったですね。資本提携にあたっては、100%の株式譲渡が条件で、新社長が派遣されることがよくあると思います。一方で社風を守るためにMBOをしていたので、主体的な経営を確実にするためにマジョリティの保持は重要なポイントでした。従業員のためにも、これまで通りの環境を維持できる丸紅さんに決めました」(中本氏)

とはいえ、交渉ではM&A当事者に避けられない心理の揺れがあったと言います。

「M&Aの譲渡側当事者は誰でもそうだと思うのですが、交渉時に『本当にこの選択がベストなのか』という迷いが生じて気持ちが沈んでしまったこともありました。その際に、オンデックのコンサルタントには親身になって相談に乗ってもらいましたし、私が丸紅さんに確認したいことをうまく交通整理して伝えてもらいました。前回支援を受けた時に続いて、オンデックの信頼できるコンサルタントに出会えたことは幸運だったと思います」(中本氏)

丸紅との資本業務提携で、イオシスは仕入れ・販売の両面でメリットを見込みます。仕入れ面では、丸紅が有する国内外の取引先ネットワークを活用した調達の強化を 。販売面では、丸紅の持つ海外販路を生かし、中古スマートフォンの海外展開が見込めます。一方、丸紅もイオシスと連携することで国内での買取・販売の強化が可能です。

「中古スマートフォンは世界中で需要があり、国内販売する際に海外の価格を指標にしている側面もあります。丸紅さんと資本業務提携したことで、自信をもって値段を提示でき、国内販売もしやすくなる。また、円安が続いているため、国内で買取し海外に販売することは競争力にもつながるはずです」(中本氏)

リユースモバイル業界のリーディングカンパニーを目指す

資本業務提携後、中本氏は株式会社イオシスの社長職を退き会長職へ。現在は新社長が中心となって経営の指揮を執っています。

「21歳で創業して30年弱、第一線で事業を経営してきました。そろそろ別の事業に挑戦してみることにも関心があります。一旦、事業会社の経営からは身を引き、自分が作り上げてきた会社で役員や従業員がどのような事業運営を行っていくのか見守っていこうと考えています。丸紅さんと連携したことでイオシスのブランド価値を最大化できるはずなので、リユースモバイル業界のリーディングカンパニーを目指してもらいたいと思っています」(中本氏)

リユースモバイル業界の先駆者・イオシスは丸紅という強力なパートナーを得たことで、さらなる成長のステージに突入しつつあります。

COMMENT
オンデックからのコメント

イオシスは、創業者・中本氏が作り上げた独自の社風と、それに惚れこんだ従業員たちが、競争力の源泉でした。一方で、同社のさらなる業容拡大には強力なパートナーが必要だったのも事実です。社風を維持しながらパートナー企業と強固な関係を構築するために、少数持分の出資による資本業務提携は最適な手段だったといえます。

本件では、イオシスの社風を強みと捉えて受け入れた丸紅の姿勢も成約の決め手になりましたが、従業員からの社風維持の期待を受けた中本氏に重圧がかかっていたのも事実です。オンデックのコンサルタントは、その重圧と不安を解きほぐすべく、ていねいに論点を整理していきました。

オンデックでは、M&Aの当事者双方に寄り添い、納得感のある支援を実施しています。M&Aによる成長戦略を検討されるなら、ぜひオンデックまでご相談ください。