成約インタビュー INTERVIEW
譲渡企業インタビュー
理美容業

2社同時の譲渡で事業規模を拡大! 投資ファンドによる理美容業のM&A

譲渡企業
買収企業
業種
理美容業
投資業
M&Aの目的
経営基盤の強化
投資先のバリューアップ

資本力の強化や経営ノウハウの獲得など、投資ファンドとのM&Aは事業拡大に有効です。ただし、企業の規模や状況によっては、投資を受けたくても受けられないケースも少なくありません。しかし、他社との「同時M&A」によって、そのような問題を解決できることがあります。
その好例が、美容サロンなどを運営するフレイムスグループ(株式会社フレイムス、株式会社トレッドル、株式会社アッド)とリタ株式会社(以下、リタ)の2社同時M&A。単独では難しかった投資の基準を満たし、ニューホライズン キャピタル株式会社(以下、NHC)とのM&Aを実現しました。現在では、100店舗以上の直営店を抱えるグループ企業の中核を担うようになったフレイムスグループとリタ。その経営者である舟津隆一氏と高橋宙氏に、同時M&Aの経緯と成功のポイントについてお聞きしました。

成約インタビューvol.7

フレイムスグループの創業者である舟津氏(左)と、リタの高橋氏(右)

美容師のための美容サロン経営で着実に成長

フレイムスグループとリタは、埼玉県川口市から大宮市周辺を中心に美容サロンやアイラッシュサロンなどを展開。同じエリアに集中的に出店する「ドミナント戦略」で運営コストを効率化しながら、質の高いサービスでリピート顧客を多く獲得し、両社とも業績は10年以上も右肩上がりでした。

スタッフにとって良好な労働環境を構築していたことも、両社が安定した成長を遂げられた要因でした。業務委託で美容師を確保する美容サロンが増えている中で、両社は正社員での雇用を原則としていました。教育制度を整備するなど、美容師の長期的なキャリア形成にも力を入れていました。さらに、出産育児金制度など手厚い福利厚生も用意。美容師の定着率を高めることで、安定した店舗運営を実現していました。

「当然ですが、美容サロンを運営するには美容師が必要です。しかし、現在は業界全体で美容師が不足しています。フリーランスや独立開業など美容師の働き方も多様化したことで、より人材採用が難しくなっているのです。そういった中では、美容師にとって魅力的な労働環境づくりが不可欠です。特に、私が経営するフレイムスと高橋社長が経営するリタはレギュラーサロン(雇用サロン)であり、美容師が安心して長期的に働ける企業を目指しています」(舟津氏)

良好な労働環境があるから美容師を確保することができ、充実した教育プログラムによって高品質な施術が提供できるから顧客を獲得できる。そうしてスタッフと顧客からの好意的な評判によりブランドへの信頼や愛着心が向上すれば、人材採用が容易になり、さらなる出店が進められるようになります。両社に生まれたこの一連の好循環は、“美容師のための美容サロン”を目指した結果といえるでしょう。

近しい経営方針で手腕を発揮する舟津氏と高橋氏ですが、実は両氏には数年来の親交がありました。美容サロンの経営者同士は横の繋がりが強い傾向にあるものの、抱える悩みは企業によって千差万別。ただ、両氏は同じ時期に開業し、同程度の店舗数を運営していたこともあって、仕事についての話をする機会が多かったそうです。

同じエリアで美容サロンを展開するライバルでありながら、刺激し合える関係性。互いの事業への影響もさることながら、それが後にフレイムスとリタによる「同時M&A」のキーとなっていくのです。

「オトナ女性の寛ぎ空間」としてカフェのような外観のFrames東川口店

事業の拡大にはM&Aが有力な打ち手だった

同時M&Aの始まりは2019年、舟津氏とオンデックのコンサルタントとの出会いからでした。美容サロン運営企業のM&Aに精通している同コンサルタントを、共通の知人から紹介された舟津氏。そこから定期的に経営課題について相談するようになり、フレイムスグループの企業価値診断を依頼したのです。

「会社は順調に成長しており、当時はすぐにM&Aをするつもりはなかった。ただ、今の会社にどれくらいの価値がつくのか知りたかったんです。美容サロン運営企業の融資は経営者保証が慣行となっているので、店舗数が増えるほど自身のリスクも大きくなる。だからといって、事業の拡大を止めると経営が悪化していく恐れがあります。リスクを下げながら成長を続けるにはフランチャイズ展開やM&Aが効果的ですが、どちらを講ずるにしても時期が大切。ベストなタイミングを見極めるために、企業価値診断をお願いしたんです」(舟津氏)

診断後、舟津氏はフレイムスグループ単独で投資ファンドとのM&Aを進めましたが、条件面が折り合わずに断念。ただ、この経験は舟津氏に大きな気づきを与えてくれました。自社の価値評価を通して、労務管理や在庫管理などマネジメント面での課題が浮き彫りになったのです。「将来再びM&Aを検討した際に条件面で不利にならないよう、経営管理体制を改善しておこう」と考えるようになりました。

また、同時期に高橋氏も、舟津氏との交流を通じてオンデックの同コンサルタントと知り合うことになります。創業当初からM&Aを前提に経営をしていた高橋氏は、企業価値の概算やM&Aのタイミングなどについて、同コンサルタントから助言を受けるようになったのです。

「リタは着実に成長してきていましたが、もっと早く事業を拡大させるために、M&Aを検討していました。ただ、買収企業より自社の規模が小さいと吸収されてしまいます。私は譲渡後も経営者としてチャレンジしていきたかったので、十分な事業規模になってからM&Aを実行したかった。当然そのためには自社の現状を把握しておくことや、M&Aに関する知見が必要だったんです」(高橋氏)

互いの状況を知らずにそれぞれM&Aを検討していた舟津氏と高橋氏。しかし、M&Aをステップアップの手段と捉えてその頃合いを見計らっているなど、M&Aに対する姿勢や状況には共通点がみられました。そこに着目したオンデックのコンサルタントが両氏に提案したのが、フレイムスグループとリタの2社同時M&Aだったのです。

「M&Aを前提としているなら、節税対策で経費を多く使うよりも利益として計上した方が会社の価値が上がるので良い。
M&Aを試みたことは、経営者としての学びになりました」(舟津氏)

同時M&Aは成長スピードを加速する妙案だった

同時M&Aには3つのメリットがありました。

1つ目は、2社が合わさることで事業規模が拡大すること。より希望に沿った条件で譲渡できる可能性が高まり、M&Aを有利に進められると考えられます。

2つ目は、シナジー効果。2社は共通した組織風土やビジネスモデルの中でそれぞれ異なる強みを持っており、情報共有や人材採用の強化など、多様な面でシナジー効果による企業価値向上が期待できました。

3つ目は、舟津氏と高橋氏の関係性。経営者同士に元より親交があったため、M&A後も支障なく事業運営が進められるであろうことも利点だったのです。

「舟津社長も私も、2社同時にM&Aをできるとは知りませんでした。確かに、M&Aをすれば、最終的にはパートナーを探してほかの経営者と事業をすることになります。だったら最初から手を組んでいても一緒。企業成長が目的のM&Aなので譲渡後も経営陣として携わる予定でしたし、見知った相手であればトラブルも少ないでしょう。規模を拡大できるのもありがたいですし、舟津社長も『成長速度が早まるかもしれない』と前向きでした」(高橋氏)

同コンサルタントの提案を両氏が承諾したことで、2020年にリタがオンデックとM&Aのアドバイザリー契約を締結。2021年から2社同時M&Aが本格始動しました。買収の引き受け先は投資ファンドに限定。事業拡大のための資金調達に加えて、管理会計制度の導入や法務コンプライアンス体制の強化など、経営支援が受けられることが理由でした。

10社以上から関心表明がありましたが、トップ面談を実施したのは3社のみ。それぞれの投資後の運営方針などを詳しく話した中で、舟津氏と高橋氏が選んだのは、最もコミュニケーションを重視していたNHCでした。

「高橋社長も私も、色々と検討してきましたがM&Aは初めてのこと。各社の提案から、どこが自社にとって最適かを判断するのは正直難しかった。そんな中でNHCは、私たちのことを理解し、寄り添ってくれているように感じました。どこの投資ファンドの支援を受けたらより事業が成長できるか、一緒にやってきた仲間が楽しく働き続けられるかを考えたとき、NHCが最適だと思えた。高橋社長も同感で、NHCが一番良いと同意してくれました」(舟津氏)

また、NHCの経営理念も同ファンドに好印象を抱いた一因でした。NHCは地域において価値を発揮している中堅中小企業を中心に、地域経済の活性化に取り組んでいました。フレイムスグループもリタも、地域社会に根差した事業を展開。地域の人やスタッフに支えられているため、相性が良いと感じたそうです。

「自分たちに合った投資ファンドを選ぶことができたのは、オンデックの役割が大きかったと思います。私たちの事業計画にどこよりも真剣に向き合い、成長を促進してくれる企業を選んでくれました。親身になりながらも、客観的な意見をくれたのも嬉しかった。そのうえで、投資ファンド側の言葉にも耳を傾け、互いにとって良い相手となるのか常に考えてくれていた。個人でM&Aを成功させるのは現実的ではありませんし、お金を払ってでもプロの支援会社に頼んだのは正解だったと思います」(高橋氏)

「オンデックはコミュニケーションの取り方もうまかった。適切なタイミングで意見を交換しながらも、
無理のない範囲で気楽にやり取りできたのが良かったです」(高橋氏)

M&Aで経営者の希望を叶え、爆発的な成長も実現

NHCとのM&Aの結果、2021年9月にフレイムスグループとリタの持株会社としてBIQREA(ビクレア)ホールディングス株式会社が誕生。舟津氏と高橋氏は共同経営者に就任しました。事業はM&A以前と同様に各社で行いつつも、BIQREAホールディングスで全体の経営管理を担当。一例では、備品の仕入れや広告戦略などでシナジー効果によるスケールメリットが得られています。

当然、NHCとのシナジー効果も発揮されています。NHCの経営支援を受けて、社労士・会計事務所に外注していたバックオフィス機能が内製化。業績などをスピーディに確認することができるようになり、効率的な経営管理が可能となりました。

「経理などを当該部署に任せることができるので、自分は事業運営に集中できる。会社を成長させるうえで非常に助かっています。加えて、当初の目的通り経営者保証のリスクが軽減されました。それでいて主に事業を展開する埼玉県下では、最大級の店舗数と美容師を有するグループになれました」(舟津氏)

M&A後のトピックは、それだけではありません。NHCの追加投資を受けて、BIQREAホールディングスは美容関連企業2社を譲り受けました。2022年7月には全国各地でアイラッシュサロン「EYELA」(アイラ)をフランチャイズ展開する「AOE Create」(エーオーイー・クリエイト)、2023年には⼤阪府を中⼼に10店舗を超える美容サロンを運営する「MASHU」(マッシュ)がグループインしたのです。

これによってシナジー効果はさらに増大しました。例えば、AOE Createからフランチャイズ経営のノウハウを学び、独立支援を望む自社のスタッフへの「のれん分け」制度を確立。フレイムスグループとリタの新業態として、独自のフランチャイズ展開も始まりました。

 「ほかの企業への投資を通じてグループを形成してゆくロールアップ戦略については、NHCとのM&A以前から企画していました。しかし、実際に参画してくれる企業がいるかは未知数でした。だからAOE CreateとMASHUがパートナーになってくれたことは、想定内でありながら想定以上の成果でもありました。これによってBIQREAグループは、M&Aをしても、ほかの企業に吸収されることはないレベルの事業規模に達した。経営者として財産となるような経験もできており、思い描いていた理想の状態を構築できました」(高橋氏)

今後もBIQREAグループは新たなパートナー企業を求めながら事業を拡大。美容サロン運営企業で五本の指に入る規模となるべく年商100億円を目指していくそうです。

成約から約2年が経過したフレイムスグループとリタの同時M&A。舟津氏と高橋氏の望みを叶えながら、両社のさらなるステップアップが実現できました。

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COMMENT
オンデックからのコメント

フレイムスグループとリタがファンドからの投資を受けることができた最大の要因は、2社による同時M&A。しかし、それと同じくらい重要だったのは、両社の業績が好調なときにM&Aを検討したことです。経営状態が良好であれば、より自社の希望に沿った条件で交渉ができ、より最適な相手を見つけやすくなります。

今回、M&Aを成功させた舟津氏も「そろそろと思ってからM&Aを検討するのでは遅い」と実感。「事業が行き詰まる前に次のステップを考えることが大切。事業拡大の手段としてM&Aという選択肢を知らない経営者も多いかと思いますが、視野に入れておいた方が良い。まずは企業価値診断を依頼するなど、早めに行動を起こしておくだけでも違う」との思いに至ったそうです。

オンデックでは譲渡企業、買収企業双方に寄り添ったコンサルティング・M&A支援を心がけています。M&Aによる事業の拡大を検討しているなら、ぜひオンデックまで相談ください。
 
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