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【朝礼で活きる名言・格言】社員の生産性を高める「小倉昌男」の名言・格言

社員が自ら問題点を見つけ、改善に努める。向上心にあふれる職場を目指すなら、アイデアを出す人だけでなく現場で働く社員も含め、会社全体の意識改革が必要不可欠です。
そこで活用いただきたいのが、ヤマト運輸の社長・会長だった故・小倉昌男氏の言葉です。小倉氏は1974年当時、誰もが「採算が取れない!」と反対した宅配便事業への進出を断行。傾きかけていた会社を立て直しました。

さらに小倉氏は「大和は我なり」を社訓に掲げて“全員経営”を徹底。さらに「サービスが先、利益は後」と説いて、サービスの品質向上を実現したのです。まさに理想を現実に変えた小倉氏。その思想を活用すれば、社員の仕事に対する姿勢が変わり、生産性の向上に繋がります。
 

「安全第一、営業第二」

小倉氏は現場で働く人を大切にし、ヤマトグループでは現在も「人命の尊重と安全の確保」を企業の理念として掲げています。その象徴となるのが「安全第一、営業第二」です。一見すると当たり前のように聞こえますが、大きな示唆がこの言葉には含まれています。

1955年当時、社長だった父・康臣氏から小倉氏は子会社の静岡運輸へ出向を命じられました。静岡運輸は事故が多く、総務部長だった小倉氏は労働基準監督署に出頭。そこである工場の見学を勧められました。工場では「安全第一、能率第二」という看板が掲げられ、工場の経営者は「安全も能率も一番とすると、どちらも中途半端になる」と言ったそうです。

第二を明言しないのは、本当の第一がないということ。そう感銘を受けた小倉氏は静岡運輸で「安全第一、営業第二」をモットーに掲げました。結果、優先順位が明確になったことで、事故は減少。安全が確保されたことで社員がいっそう頑張れるようになり、営業成績も上がったのです。

小倉氏は社長の役目について「会社の現状を正しく分析し、何を重点として取り上げなければならないかを選択。それを論理的に説明すること、つまり戦略的思考をすることに尽きる」と語ります。朝礼で「〇〇第一、△△第二」と自社の事業に当てはめ、戦略的な思考を共有。たったそれだけで、社員の生産性が一気に高まるでしょう。

朝礼で伝えたいポイント:作業の優先順位を明確にする

・仕事で重要なのは選択と集中である
・アレもコレも欲張ると中途半端な結果になる
・第一に挙げられたことを最優先に行動する

朝礼での活用例

おはようございます。本日は日頃からセールスに勤しむ皆さんに、我が社の方針をお伝えしたいと思います。

「信頼第一、営業第二」

目標の達成も大切ですが、今後はお客様の信頼を最優先としてください。無理に契約を取ろうとする必要はありません。私たちはどこよりもお客様に信頼される会社を目指すのです。

ヤマト運輸の社長であった小倉昌男さんも、かつて「安全第一、営業第二」を掲げました。すると多発した事故が見事に減少しました。事故が減って余裕が出たおかげで、営業成績も上がったそうです。

これに習い、私たちもまずはお客様から信頼をいただくことへ専念しましょう。そして、お客様から本当に信頼をいただけたなら、自ずと営業目標も達成できているはず。「信頼第一、営業第二」を心がけ、ぜひお客様に頼られるセールスマンになってください。

「『なんでだろう』と疑問を持つのは、自分の頭で考えることの第一歩だ」

小倉氏は、与えられた意に染まない仕事でも「自分の頭で考えることで、仕事を自分事化でき、楽しめるようになる」と主張していました。同時に「自分が目にした物事に対して『なんでだろう』と疑問を持つのは、自分の頭で考えることの第一歩だ」とも説いたのです。

疑問を感じて自分なりに考えれば、新しい発見やアイデアが浮かぶもの。マニュアルがある仕事でも内容に納得できれば自分の仕事の意味がわかって意欲が増します。逆に、納得できなければマニュアルの改善にも繋がります。つまり、活気ある職場を作りたいなら、社員に自分の頭で考える機会を与えることが大切なのです。

考える機会を与える施策として、ヤマト運輸ではドライバーが営業活動や集金、経理など幅広い業務を担当。自分で物事を判断する能力を求め、経営者的な仕事を含ませることで「全員経営体制」を構築しようとしました。一人ひとりが経営感覚を持つことで、仕事へのやりがいを感じられるようにしたのです。

全員経営体制を取り入れるのは難しいと思いますが、朝礼で社員に「なんでだろう」と考えるように投げかけるのは容易です。日々の仕事を自分の頭で考えることを促すことで、社員全員が当事者意識を持ち、業務の効率化に繋がるかもしれません。

朝礼で伝えたいポイント:自分の頭を使うことで仕事が楽しくなる

・与えられた仕事であっても自分の頭を使う
・仕事に対して「なんでだろう」と興味を持つ
・好きな仕事でないならプロセスを楽しむ

朝礼での活用例

おはようございます。さっそくですが、質問です。最近、「なんでだろう」と感じたことはありますか? 

感じたことがある方、よろしかったら挙手してください。……私は、あなたが非常に優秀な方だと思います。

私が尊敬する小倉昌男さんは自身の著書で「『なんでだろう』と疑問を持つのは、自分の頭で考えることの第一歩だ」と話しました。小倉さんは「なんでだろう」と考える人は自分の頭で考えられる人、自然と成長できる人だと言うのです。

自分の頭で考えられる人は、どんな仕事でも「なんでだろう」と興味を持つことができます。前向きな姿勢で仕事に向き合い、仕事の意味を理解したり、仕事を改善したりできます。つまり、仕事を楽しみながら目標を達成できるのです。

私も同意見です。みなさんも「なんでだろう」と考えるクセを身につけてください。今の仕事が好きでない人は、ことさら意識してみましょう。目標を達成するプロセスを楽しめるようになり、仕事が効率的かつ楽しいものへと変わるはずです。

「『楽』というキーワードが会社を進歩させる」

会社において無駄な労力をなくすことは、とても重要。小倉氏は業務改善の有効な方法として「嫌なことを探す」ことをオススメしていました。日々の業務な中で「イヤだ」「気が重い」といったことを抽出し、無くしていくのです。

ヤマト運輸において、改善の代表格となったのが集配車でしょう。宅急便を始めた直後は、日本の車では積み下ろしのため、いちいち乗り下りしなければなりませんでした。それではドライバーに負担がかかり、効率もよくありません。そこで、社員の案を元に専用の集配車を、トヨタ自動車協力のもと開発したのです。

完成した集配車は、運転席から荷室へ歩いていけるウォークスルー構造を採用。天井も高いので前屈みになる必要もありません。1日100回近く乗り降りを繰り返していたドライバーの負担は大きく軽減。作業効率も一気に向上したそうです。

集配車のように大きなことだけでなく、日々のちょっとした業務も含め、仕事を楽にできる方法を考えていくことが無駄な労力を減らす近道。ぜひ朝礼で社員に「楽をしよう」と呼びかけ、アイデアを募ってみてください。効果的な改善策が見つかると思います。

朝礼で伝えたいポイント:楽をすることが生産性向上につながる

・日々の業務でイヤなことを見つける
・楽をするためにイヤなことを解消する
・余裕が生まれたら、生産性が高まる

朝礼での活用例

みなさん、本当に仕事を頑張っていらっしゃいます。ですが、こう考えたことはありませんか? 「もう少し楽をしたいなぁ」と。

多くの人に賛同いただけると思いますが……実は私もそう思っています(笑)。もう少し手間が減ったら、仕事を早く終えることも、やりたい仕事にもっと時間をかけることもできるのに、と。

そこで提案です。ぜひ、私と一緒に楽をしませんか? みなさんが日々、感じている「イヤなこと」「無駄なこと」「面倒なこと」を私に教えてください。日々の業務の、ちょっとしたことで構いません。それらを一つひとつ解決し、全員で楽に働ける環境を作りましょう。

ヤマト運輸の社長だった小倉昌男さんは「『楽』というキーワードが会社を進歩させる」と言いました。宅配便を始めた当初、ヤマト運輸では1トン積み車両を使い、1日100回近くも車を乗り降りしていました。小倉さんはドライバーの負担を憂い、専用の集配車を開発します。車内から荷室へ歩いて行けるようにしたのです。結果ドライバーの負担が減っただけでなく、作業効率が向上したのです。疲労による事故防止にも繋がりました。

専用の集配車を作るようなことは、当社では難しいと思います。しかし、少しでも楽をしようと工夫すれば、みなさんの負担を減らすことはできると思います。より働きやすく、より仕事に集中できる環境を作るため、ぜひ私に皆さんが感じている「楽をしたいこと」を教えてください。

仕事には「一期一会の精神」も大切

小倉氏は仕事には一期一会の精神が不可欠と考えていました。「同じ仕事の繰り返しであったとしても、一つひとつは一生に一度の出来事。毎日真剣に取り組むべきだ。そうでないと仕事は反復作業となり、仕事の質はもちろん意欲も失われる」と説いたのです。

今回紹介した言葉も内容は違えど「社員にやりがいをもたらし、働きやすい環境を作ること」を目的としています。朝礼に引用すれば、社員の意欲もグッと高まるはず。そして社員全体がやりがいを感じれば、会社が大きく成長すること間違いなしです。

小倉昌男(おぐらまさお) 1924-2005
享年80歳。1971年に創業者である父の後を継ぎ、大和運輸の社長に就任。1976年に商業貨物から撤退して、宅急便事業をスタートする。1993年には24億円もの私財を投じて「ヤマト福祉財団」を設立、理事長を務める。障がい者の低賃金を解決するため、精力的に支援した。

参考図書
「経営学」小倉昌男|日経BP
「小倉昌男の人生と経営」小倉昌男|PHP研究所
「[新装版]「なんでだろう」から仕事は始まる!」小倉昌男|PHP研究所
「宅急便の産みの親 小倉昌男」|ヤマトホールディングス