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【15分でわかる法律・白書・ガイドライン講座】中小企業白書2021年度版より「事業承継を通じた企業の成長・発展とM&Aによる経営資源の有効活用」を動画で解説

※このコンテンツは、Youtube・ONDECKチャンネルにて配信中の動画シリーズ「経営者なら知っておきたい 15分でわかる法律・白書・ガイドライン講座」を書き起こしたものです。動画は こちら からお楽しみください

この動画では、M&A仲介・支援を行っているオンデックが経営者の皆様にとって役立つ情報をお届けするために、中小企業白書や、中小M&Aガイドラインなど、膨大な情報が記載された公的な資料などから、経営にとって重要なポイントをピックアップし、15分でわかりやすく解説します。

今回は、中小企業白書の中から「事業承継を通じた企業の成長・発展とM&Aによる経営資源の有効活用」について解説します。

中小企業庁が発行する中小企業白書には、中小企業の動向や、 付加価値の増大、雇用維持などにつながる取り組みの調査結果や分析結果が多数掲載されています。しかし、中小企業白書は、580ページにも及ぶ膨大な資料です。この動画では、重要なポイントをピックアップし、15分でわかりやすく解説します。
 → 中小企業白書(中小企業庁WEBサイト)

重要なポイントを押さえて、日本全体の中小企業の傾向を把握し、明日からの経営に取り入れ、未来に繋げていきましょう。

経営者の高齢化が進む中小企業の事業承継は、社会的な課題として認識されています。中小企業にとって事業承継は、単なる経営体制の変更ではなく、更なる成長・発展を遂げるための一つの転換点になり得ます。
また、事業承継策のひとつであるM&Aは、近年では成長戦略としても関心が高まっています。さらに、コロナ禍による影響をはじめ、経営危機への救済・対処として、企業の取り得る選択肢のひとつにもなります。

本動画では、中小企業白書の「事業承継を通じた企業の成長・発展とM&Aによる経営資源の有効活用」について、こちらのテーマに沿って説明します。

 

国内における事業承継の現状

まず、国内における事業承継の現状です。

近年事業承継をした経営者の就任経緯についてです。近年、同族承継の割合は減少し、2020年には、内部昇格と同水準となっています。
すなわち、事業承継の方法が、これまで主体であった親族への承継から、親族以外への承継にシフトしてきていることがわかります。

次に、後継者の有無と企業パフォーマンスの関係についてです。売上高、営業利益、従業員数のそれぞれの成長率について、いずれも後継者有企業が高い傾向にあることが見て取れます。

後継者有企業では、後継者への事業承継に備え、前向きな事業運営を行っていると推察されます。あるいは、業績不芳な企業では、それがネックで後継者が不在ということも考えられます。このように、後継者の有無と企業パフォーマンスの相関関係が確認できました。

続いて、後継者有企業の事業の承継方法です。後継者有企業の67.4%が同族承継を予定しており、後継者が決まっている企業では、親族への承継が中心であることがわかります。

ここで、現経営者が事業承継の課題と考えるものとして、「事業の将来性」が最も多く、次いで「後継者の経営力育成」や「後継者を補佐する人材の確保」など、事業承継後の経営体制に関するものが挙げられています。

次に、事業承継した際の経営方針です。「先代経営者の取組の継承・強化」 と「新たな取組に積極的に挑戦」がいずれも40%程度と同程度であることがわかります。

また、経営者の就任経緯別に事業承継時の経営方針を整理すると、同族承継では「先代経営者の取組の継承・強化」が多い一方、内部昇格や外部招へい・その他では「新たな取組に積極的に挑戦」が多いことがわかります。

また、現経営者が事業承継後5年程度の間に意識的に実施した取組として、「新たな販路の開拓」や「経営理念の再構築」、「経営を補佐する人材の育成」が挙げられます。このような状況を踏まえると、課題を乗り越えて事業承継を実現した場合、後継者が積極的に経営に取り組むことが見込まれます。

事業承継実施企業のパフォーマンス

次に、事業承継実施企業のパフォーマンスについてです。

事業承継実施から5年後の売上高・当期純利益・従業員数の成長率によると、事業承継実施企業では、いずれも同業種平均値よりも高い数値を示しています。

また、これらの指標について、事業承継時の後継者の年齢別に分析すると、すべての指標で、年齢に関わらず同業種平均値を上回っていることがわかります。特に後継者の年齢が39歳以下においては、成長率が高い傾向にあります。

また、同じ指標について、承継方法別に分析したものがこちらです。
こちらを見ると、承継方法別に大きな違いはありませんが、いずれの場合も同業種平均値を上回っていることがわかります。

続いて、同じ指標について、事業承継時の業績傾向で区別し、分析したものです。
これを見ると、増収企業の成長率が高いものの、減収企業でも事業承継後の成長率は同業種平均値を上回っています。すなわち、事業承継後にパフォーマンスが向上していることがわかります。

以上の通り、事業承継実施企業は、事業承継時の状況により多少の差はあるものの、総じて同業種平均値を上回るパフォーマンスを示していることがわかりました。先代経営者や後継者は、事業承継を単なる経営者交代の機会ではなく、企業の成長・発展の機会と認識し、事業承継に向けた準備を進めることが重要です。

M&Aを通じた経営資源の有効活用

続いて、M&Aを通じた経営資源の有効活用です。

中小企業においても、M&Aが事業承継や経営戦略の一策として一般化しつつありますが、数字で確認すると、3割程度の中小企業が、何らかの形でのM&Aの意向を示しています。

買い手としてのM&A実施意向

ここで、まず買い手としてのM&A実施意向がある企業について、詳しく分析していきます。なお、以下では「買い手としてのM&A実施意向」を「買い手意向」と表現します。

まず、過去のM&Aの実施経験の有無による買い手意向の整理です。M&Aを経験している企業は、未経験の企業に比べ、買い手意向が強いことがわかります。

次に、経営者の年齢別の買い手意向です。
これによると、経営者の年齢が若い企業ほど買い手意向の割合が高いことがわかります。特に、経営者の年齢が30代以下の企業では、4割以上が買い手意向を示しています。

続いて、従業員規模別の買い手意向です。
これによると、従業員規模の大きい企業ほど、買い手意向の割合が高いことがわかります。

続いて、買い手意向のある企業とない企業について、財務面の特徴を分析します。
自己資本比率・売上高増加率・営業利益率について見てみると、買い手意向のある企業は、自己資本比率の状況に関わらず、成長性や収益性が高い企業と捉えることができます。この点、借入を積極的に利用し、M&Aを含む成長投資に充てていることが、高い成長性や収益性を生み出しているのではないかと推察されます。

続いて、買い手としてM&Aを検討したきっかけや目的についてです。
主なものとしては、「売上・市場シェアの拡大」や「新事業展開・異業種への参入」、「人材の獲得」や「技術・ノウハウの獲得」などが挙げられます。

続いて、買い手としてM&Aを実施する際に重視する確認事項についてです。
主な確認事項として「事業の成長性や持続性」「直近の売上、利益」「借入等の負債状況」、「経営陣や従業員の⼈柄や意向」「既存事業とのシナジー」などが挙げられます。

一方、買い手としてM&Aを実施する際の障壁についてです。
これによると、「期待する効果が得られるかよく分からない」「判断材料としての情報が不足している」「相手先従業員等の理解が得られるか不安がある」といったものが、買い手にとってのM&Aの障壁として挙げられています。

また、M&Aの経験の有無によって、買い手のM&Aの障壁を整理すると、それぞれが障壁と考える項目には、多少の違いがあることがわかります。

M&A経験のある買い手が障壁となり得る項目として一番に挙げている「相手先従業員等の理解が得られるか不安がある」という点については、過去のM&A経験によるものと推察され、決して簡単ではないものと思われます。

初めてM&Aを実施する買い手においては、これらの障壁を解消すべく、M&A支援機関などを有効活用し、サポートを受けることも重要と考えられます。

以上、買い手側の立場から検討してきました。

売り手としてのM&A実施意向

続いて、売り手としてのM&A実施意向です。

売り手としてM&Aを検討したきっかけや目的は、こちらの通りです。
「従業員の雇用の維持」や「後継者不在」といった事業承継関連の目的のみならず、「事業の成長・発展」も挙げられており、多くの企業が成長・発展を目的として、売り手としてのM&Aを検討していることがわかります。

続いて、売り手としてM&Aを実施する際に重視する確認事項についてです。
主なものとして「従業員の雇用維持」や「売却価額」、「会社や事業の更なる発展」が挙げられています。特に「従業員の雇用維持」は、約8割の企業が挙げており、M&Aによる売却・譲渡後の従業員の雇用維持がポイントのひとつであることがわかります。

続いて、売り手としてM&Aを実施する際の障壁についてです。
中小企業の事業承継や成長戦略として、M&Aは一般的になりつつあるものの、「経営者としての責任感や後ろめたさ」が最上位に位置していることからも、このような心理的側面が、M&Aの意志決定に大きく影響していることがわかります。特に、前述のM&A実施時の確認事項で「従業員の雇用維持」が挙げられていた通り、従業員に対する後ろめたさのような感情が、M&Aの障壁となっている可能性があります。また、「相手先(買い手)が見付からない」や「仲介等の手数料が高い」といった、実務的な要因も、売り手のM&A実行の障壁として挙げられています。

このように、売り手にとって、M&Aでの従業員の雇用継続が重要なポイントですが、M&A実施後の雇用の継続状況はこちらの通りです。
こちらによると、80%以上の企業で、雇用が継続されていることがわかります。人材や技術・ノウハウの獲得を目的にM&Aを実施する企業も多いことから、M&A実施後も売り手企業の従業員の雇用が継続されるケースは多いと考えられます。従業員の雇用継続を重視する売り手企業においては、交渉過程で、従業員の雇用継続の希望を明確に伝えることが重要といえます。

次に、売り手企業の経営者の処遇についてです。
こちらによると、M&A実施後も、半数以上の企業において、売り手企業の経営者が何らかの形で事業に関与していることが分かります。

今回取り上げたテーマのまとめ

最後に、今回取り上げたテーマについてのおさらいとまとめです。

今回は、事業承継を通じた企業の成長・発展とM&Aによる経営資源の有効活用をテーマとして取り上げました。

事業承継は、親族内承継中心から親族外承継にシフトしつつある旨、説明しました。

また、事業承継を実施した企業は、同業種平均値を上回るパフォーマンスを挙げており、事業承継が成長・発展のためのきっかけとなり得る旨を説明しました。

また、M&Aの実施に際して、買い手はこのように目的を有している一方、障壁を考えている旨、説明しました。

一方、売り手がM&Aで重視する項目はこちらの通りで、同様に障壁を考えている旨、説明しました。

事業承継やM&Aが成長・発展のための経営戦略の一手となりつつある中、これらの知識を深め、自社の具体的な選択肢として備えることは重要であると考えられます。なお、検討の際には、実績のある専門家へのご相談をお勧めします。

このように、中小企業白書には、明日から役立つ情報が、多数掲載されています。今を知り、これからを考えることで、企業が新しい価値を生み出し、未来の経営につなげることができます。ぜひ、明日からの経営にお役立てください!

文=オンデック情報局