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【社長のための経営相談所】事業が順調なのに、知人の会社が廃業しました。これはよくあることなのでしょうか?

社長のための経営相談所_廃業の理由

この【お悩み解決!社長のための経営相談所】では、経営者の方が抱えられているお悩みやよくあるご質問に回答します。

【Q】事業が順調なのに、知人の会社が廃業しました。これはよくあることなのでしょうか?

事業経営の悪化によって廃業となる会社が多い印象はありますが、廃業の理由はそれだけではありません。経営者の高齢化、後継者の不在など、様々な理由で、会社を廃業せざるを得なくなる場合もあります。

中小企業白書に記載された東京商工リサーチの調査によると、2019年の全国の休廃業・解散件数は4万3,348件となっており、平均すると1日あたり約118件もの企業が休業や廃業、解散によって企業活動を停止または終了していることがわかります。

東京商工リサーチの「企業経営の継続に関するアンケート調査(2017年)」によると、廃業を検討している企業の経営者の回答のうち、廃業検討の理由として最も多かったものが「業績が厳しいこと」で37.3%でした。次いで多い理由が「後継者を確保できない」で33.3%となっており、後継者不在という問題も、企業の存続に非常に大きな要因であることがわかります。

さらに、休業や廃業、解散を行った企業の経営者の年齢はどれくらいかというデータを見ると、70代が最も多く39.1%を占めています。さらに60代以上として見た場合には、その割合はなんと80%を超えます。

このように休廃業・解散をした企業の代表者の多くは高齢であることがわかります。


図3 休廃業・解散企業の代表者年齢の構成比
「中小企業白書(2020年版)」(中小企業庁)

さらに、休廃業・解散する直前期の決算に関するデータを確認すると、なんと全体の61.4%が、純利益が黒字であるにも関わらず休廃業・解散を行っています。

休廃業・解散企業の損益別構成比
図4 休廃業・解散企業の損益別構成比
「中小企業白書(2020年版)」(中小企業庁)

こうしたデータを踏まえると、多くの企業が「黒字であるにも関わらず、現経営者が高齢となり、後継者が不在であったがために休廃業または解散をせざるを得なかった」と考えることができます。
この状況は社会問題として日本政府も認識しており、このまま廃業が増加すれば2025年までの累計で、約650万人の雇用と約22兆円ものGDPが喪失される可能性があると試算されており(※1)、事業承継問題における2025年の崖とも呼ばれています。

以上、ご質問の事例の個別具体的な廃業理由はわかりませんが、事業経営が上手くいっていても廃業を選ばざるを得ない状況もあり、それが社会問題化しているという現状を解説しました。
経営者としての引退はいずれ必ず訪れます。事業が望まない形で廃業とならないよう、早い段階から十分に準備をしておきたいところです。

※1 「中小企業・小規模事業者の生産性向上について(2017年10月)」(経済産業省)

文=オンデック情報局