オンデック・プレス ONDECK PRESS
M&Aガイド

【社長のための経営相談所】後継者問題への対策は、いつ頃から考えておくべきでしょうか?

後継者問題への対策は、いつ頃から考えておくべきでしょうか?

この【お悩み解決!社長のための経営相談所】では、経営者の方が抱えられているお悩みやよくあるご質問にオンデック情報局が回答します。

【Q】後継者問題への対策は、いつ頃から考えておくべきでしょうか?

事業の将来と後継者について、いつから考えれば良いか?というのは非常に難しい問題です。
ですが、経営者の年齢というのが一つの目安になるかも知れません。経営者が引退するタイミングは言い換えれば後継者問題が顕在化するタイミングです。まずは、日本全体の経営者の年齢や、事業をバトンタッチする「後継者」の有無の傾向などから、目安となる年齢を考えてみましょう。

現在の経営者の年齢の分布について見てみましょう。「中小企業白書(2019年版)」によると、最も多い経営者の年齢は、1995年には47歳だったものが2018年には69歳となっています。


図1 年代別に見た中小企業の経営者年齢の分布
(出典:中小企業庁 2019年中小企業白書)

グラフを見ると、各集計期間の山となる部分が、集計期間の推移に合わせて右に推移しています。これは単純に考えると、1995年に経営者であった人の大部分が、23年経った2018年においても経営を継続しており、経営者の高齢化が進んでいる状況だと捉えることができます。

では一方で、休廃業を行った企業や解散した企業の経営者の年齢は、どうなっているでしょうか。

中小企業白書(2020年版)」に掲載されている、休廃業・解散企業の代表者年齢の調査では、2019年は「70代」が39.1%と最多となっています。また、60代以上が全体に占める割合は、2019年では83.5%にもおよびます。
これがそのまま経営者が引退する年齢の目安というわけではありませんが、休廃業・解散による経営者の引退は、日本全体として60代以降が大半を占めているという点が特徴的です。

休廃業・解散企業の代表者年齢の構成比
図2 休廃業・解散企業の代表者年齢の構成比
(出典:中小企業庁 2020年中小企業白書)

経営者の高齢化と、後継者の有無

なぜ経営者の高齢化が進んでしまうかという点を、後継者の有無の面から考えてみましょう。経営者のなかには、まだまだ自分は現役だから後継者は不要だと考えている経営者もいらっしゃいます。その一方で、次に経営を任せる適任者(後継者)の不在により、高齢でありながらやむなく経営を続けられているケースもあります。

これまで培ってきた事業や貴重な経営資源を、次の経営者(後継者)へ引き継がない場合には、結果的には廃業を選択することになります。しかし、廃業してしまうと、長きにわたって築いてきた取引先との関係がなくなり、会社に貢献してきた従業員の雇用も失われます。「中小企業白書(2020年版)」によれば、2019年に休廃業・解散した企業のうち、約6割の企業が、直前期の当期純利益が黒字でありながら休廃業・解散したというデータも掲載されています。

では、実際に後継者が不在である会社はどのくらいあるのでしょうか。

同じく「中小企業白書(2020年版)」によると、60代では約半数、70代は約4割、80代は約3割で後継者が不在となっており、すなわち事業を継続できないリスクを抱えていることがわかります。

社長年齢別に見た、後継者決定状況
図3 社長年齢別に見た、後継者決定状況
(出典:中小企業庁 2020年中小企業白書)

年代別に後継者の決定状況を見ると、40代から徐々に後継者が決定している割合が増えていき、60代では過半数が「後継者が決定している」と回答しています。先ほどの「現在の経営者の年齢」のグラフと照らして考えると、多くの経営者が60代のあいだに後継者を決定していることがうかがえます。

では、経営者が70代・80代になってから後継者の選定に取り組んでも間に合うのでしょうか。「中小企業白書(2017年版)」によれば、後継者の選定を始めてから後継者の了承を得るまでにかかった時間に「3年超」と回答した割合は、37%にのぼっています。また同白書の2019年版には、後継者を決定して実際に引き継ぐまでの期間として、約半数が「1年以上の時間をかけた」と回答したという調査結果もあります。

仮に、70代・80代になってから、3年超をかけて後継者候補を選定して了承を得て、さらに1年以上の引き継ぎの期間をかけて事業承継を行うことは、体力的にも非常に困難であることは想像に難くないでしょう。事業承継は長い期間を要する取り組みであり、経営者が高齢になるほど時間的な猶予は限られてしまうため、早めに検討を始めることが重要です。

さて、最初の質問「後継者問題への対策を考え始める時期」についてですが、経営者の年齢という観点から見た場合、遅くとも経営者が60代になったら、親族に承継するのか? 従業員に承継するのか? 第三者に譲渡するのか?などの方向性を決めておきたいところです。

文=オンデック情報局