成約インタビュー INTERVIEW
譲渡企業インタビュー
卸売業

会社の歴史を絶やさず、掛け算の効果も生んだ金物卸業のM&A

譲渡企業
買収企業
業種
金物卸業
機械工具卸業
M&Aの目的
後継者問題の解決
拠点倉庫の獲得
取り扱い商品の拡大

後継者問題への取り組みやM&Aの検討は早期に行うべき、という提言は多く聞きますが、その取り組み方によっては、本来スムーズに進むはずのM&Aが暗礁に乗り上げてしまうこともあります。
金物卸業を営む企業の経営者 鈴村雅幸氏(仮名)も、一度はM&Aを検討して進めたものの、うまくいかずに断念した経緯があったといいます。
しかし、そこからオンデックの仲介によって再度M&Aを実行し、無事に事業承継を行うことができました。どのような心境でその荒波を乗り越えたのか、M&Aを終えた鈴村氏にお話をうかがいました。

会社を途絶えさせない。その想いが導いた未来

一度は臨んだ自力での立て直し。そこから再度M&Aを決断

「私がM&Aを検討したのは、事業を再建したかったことと、それを担ってくれる後継者が不在であったこと、この2点が大きな背景です。実は数年前にも一度、後継者がいないことが課題に挙がり、メインでお世話になっている銀行にM&Aの相談に乗ってもらっていたんです。銀行に紹介してもらった公認会計士や税理士とも根を詰めて取り組んだのですが、最終的には頓挫してしまいました。それに手数料も高いと当時感じたこともあって、M&Aではなく自分たちで事業を再建する道を一度は選んだんですよ」(鈴村氏)

鈴村氏は創業家の人間ではなく、内部昇格で社長になり会社を引き継いだという経緯があります。そのため、自身が後継者を探す際にはまず、自力での再建に取り組みながら社内で後継者を育成する方向でチャレンジしてみたものの、次の経営者になれるような人材を育てることができなかったといいます。さらに、そこに追い打ちをかけるようにして業績が悪化。このままではもう自力での再建も後継者の育成も難しいと考えた鈴村氏は、会社の歴史を途絶えさせないため、あらためて事業承継の相談をスタートさせました。

「オンデックさんを知ったのは、証券会社からの紹介でした。先ほど述べたように、銀行に相談していたM&Aの話はうまく進まなかったという過去があるので、実は最初オンデックさんに相談したときも、またつまずくのではないかなという不安がありました。
けれどオンデックさんは、誠実に、熱意を持って、私たちと深く対話し、資料を整理し、実直に足を運んで協議を重ねていただきました。担当していただいたコンサルタントの熱意に本当に感心しましたよ。結果としては驚くほどうまくいったので、本当にオンデックさんに頼んでよかったと思っています」(鈴村氏)

鈴村氏は過去にM&Aが頓挫した経験から、条件面で強く主張するのは避けつつも、従業員の雇用を継続してほしいことと、会社の名前を残してほしいことを希望として挙げていました。会社の創業者はもう亡くなってはいたものの、創業者のご子息は健在で、鈴村氏自身の「この会社を終わらせたくない」という想いの源泉にもなっていたからです。加えて、可能であれば、単に事業を引き継ぐだけでなく、さらに発展させてくれる企業への譲渡を望んでいました。

「譲受企業の希望として、インターネット通販の事業をされている会社を紹介いただきたいとお願いしました。私たちには商材が多くあり、付き合いの長い取引先もあったので、それを活かしてくださる企業だと嬉しいなと思って。そのためにはインターネットを活用されている会社がいいと。
ただインターネットというと、私のような年代にしてみればいかにもベンチャー的というか効率重視というか、ともすれば私たちの保有する不動産や、都合のいいところだけをかすめ取って、従業員などが切り捨てられてしまうようなイメージもゼロではなかったので、一方で不安もありました。蓋を開けてみれば、もともとの希望が叶った形になり、最高のシナリオだったと思います」(鈴村氏)

会社を途絶えさせない。その想いが導いた未来

長所がひとつになり、「足し算」ではなく「掛け算」の効果が生まれる

「M&Aがうまくいったなと感じる部分のひとつに、譲受企業とのニーズが合致したことが挙げられます。私たちは大きめの倉庫を持っていて、それがひとつの強みだったのですが、譲受企業はそこを自社の拠点倉庫として活用することを希望してくださった。一方で私たちも営業力と販路の獲得ができて業績を向上させられる見通しが立てられた。M&Aによって、そういったお互いの強みとニーズがぴたっとマッチした感覚があります」(鈴村氏)

M&Aの結果が売上に現れてくるのはまだまだこれからですが、と前置きしたうえで、将来的には譲受企業の商品リストを使って、得意先への提案も始めていける見通しだと話す鈴村氏。すでに両社の中でも、エリアを分担して、営業マンが2社分の名刺を用意し、担当する会社を割り振っていくといった営業の合理化も始まっているといいます。

「従業員は、これまでの仕事と、M&Aによって得られた新しい仕事とで急に忙しくなったと少し驚いていたようです。従業員にはM&Aに至るまでの細かい事情までは伝えていませんが、うちの従業員のことだから、会社が売上で困っている事は言わなくてもわかっていたのでしょう。
だから、大変だという従業員の気持ちは受けとめつつ、業績が伸び悩んでいることをきちんと話して、このままでは会社が生き永らえられない、大変かもしれないけど2年3年も続くものではないから乗り越えていこうとお願いしました」(鈴村氏)

譲受企業とひとつになることの大変さを話される中で、自社の数万点ある商品を、譲受企業がインターネット上の店舗に登録してくれるということが非常に印象的だったと話す鈴村氏。非常に大変に思えるその作業を、譲受企業の担当者ひとりで全部できるという話に、たいへん驚いたといいます。

「実は私たちも過去にやろうとしたことはあったけれども、商品量が多かったため途中で挫折してしまった。それをひとりでできてしまうというのは、私のようなITに詳しくない人間にはにわかには信じがたかったです。けれど、譲受企業はそうした分野に長けているということですよね。
M&Aというのは、先ほどの倉庫の話にも通じますが、強みの持ち寄りというか、こちらの長所と譲受企業様の長所、それらがひとつになることによって、単なる足し算の効果じゃなく掛け算の効果が生まれるんだなと、身をもって感じましたね」(鈴村氏)

それに加えて、M&Aがうまくいったと感じる理由に、譲受企業の社長の人柄も大きかったと話す鈴村氏。自社の非常に厳しい業績のことをわかった上で、それでも活かせる良いところを探して伸ばそうという姿勢に好感を持ち、非常にいい社長に出会えたと実感しているそうです。最後に、M&Aを無事に終えられた気持ちをこう話してくれました。

「後継者もおらず、そんな状態で業績も悪化してきた私たちの立場からすると、もっと早めに実行するべきだったな、M&Aを検討するのがちょっと遅すぎたなと思いますね。私たちの場合、オンデックさんの頑張りと、運と縁に恵まれたことで本当にうまくいったと思います。経営状態から言うと、もっと難航してもおかしくない状態でしたから。やっぱり会社の経営が健全なうちに決断したほうがいいと思います。
人間の体と同じで、健全な時には考えないものだけど、どこかが悪くなってから取り組もうとしても、色々と難しくなってくる。これまで会社に尽くしてくれた従業員や、長い付き合いのある取引先を大事にするためにも、まだまだ会社が元気だという時にこそ、M&Aのことは考えたほうがいいと思いますね」(鈴村氏)

COMMENT
オンデックからのコメント

中小・小規模企業のM&Aにおいて、M&Aの準備や取り組みを始める時期は非常に重要です。特に本件のように、売上が減少傾向にあり、さらに後継者が不在であるような場合、「廃業」という選択肢を迫られるケースも多くなります。「廃業」は単に会社がなくなるというだけにとどまらず、従業員や取引先にも大きな影響を与えます。
また、今回のように事態が悪化してからM&Aを決断された場合、お相手探しは困難を極めます。早い段階でM&Aを検討し、準備に取り組んでいただくことで、会社・経営者の双方にとって良い結果をもたらします。
 
本件の最大のポイントは、譲渡側企業の社長が、一度はM&Aに苦心し、自力での再建を試みて難航したにもかかわらず、安易に廃業を選ばずに、従業員や取引先の将来を考え再度M&Aに取り組まれたことです。後継者問題にお悩みの方は、ぜひオンデックに気兼ねなくご相談ください。