オンデック・プレス
ONDECK PRESS
【事業承継の準備とM&A】検討初期に知っておきたい自社の価値の高め方
M&Aを進める準備として、自社の価値を高めることが重要です。自社の価値を多面的に向上させることで、相手方にとって魅力のある企業になり、M&Aにおける交渉の過程で、より優位に交渉を進めることが可能になります。
では、具体的にどのようにすればよいのでしょうか。
実は、画一的な方法論はありません。企業によって、業種や規模は勿論、取り巻く環境や強み・弱みも異なります。それらを把握した上で、価値向上策を実施する必要があります。
企業価値の向上策には、大きく以下の3つが考えられます。
(1)自社の強みの明確化、弱みの改善
(2)管理体制・内部統制の強化
(3)資産効率の向上、財務の最適化
それぞれの具体例は、以下の通りですが、向上策は記載したもの以外にも多岐にわたるため、士業等の専門家の助言を得て進めることも効果的です。
(1)自社の強みの明確化、弱みの改善
- 他社との違いを明確にすることで、自社の特徴を活かす販売戦略を作成し、販売力の強化、利益率の改善を図る。
- 従業員の年齢構成を見直し、偏りをなくすことで、事業の継続性を高める。
- 取引先や販路の偏重を見直し、依存度の高い取引先を減らすことで、事業リスクを分散する。
(2)管理体制・内部統制の強化
- オーナーと企業との線引きを明確化する。具体的には、不動産の賃貸借やゴルフ会員権、車両、交際費など、経費の公私混同を整理する。
- 従業員に権限移譲を行い、オーナーしか行わない(行えない)業務を減らし、組織として、業務を行う。
- コンプライアンスを強化し、遵法体制を整える。
- 事業に関連のない株主や名義株など、株主の整理を行う。
(3)資産効率の向上、財務の最適化
- 不要資産(不動産や有価証券など)の処分や不良・滞留在庫の圧縮、余剰負債返済などを行い、バランスシートをスリムにする。
- 売掛金等の回収サイトを早め、資金効率を高める。
業績の改善や経費の削減だけでなく、自社の商品やブランドイメージ、顧客、人材、知的財産権やノウハウなどが「強み」となります。上述のような施策が奏功するまで、多大な時間を要するため、事業承継を考え始めたその時から、早めに自社の価値向上に着手することが大切です。そうすれば、M&Aに取り組むときには、魅力ある企業となり、より良い相手がみつかることにも繋がります。
文=中垣洋祐(弊社コンサルタント)