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M&Aガイド

【事業承継の準備とM&A】借入金から取引先まで 整理しておきたい経営者と会社の関係

M&Aでの事業承継の準備

さて、M&Aによる会社売却を行うと決めた場合、最初に行うべきことは何でしょうか。M&Aといえば、相手先の選定や交渉が頭に浮かびますが、それはまだ先の話です。相手先に自社のことをしっかりと理解してもらい、双方が真に満足するM&Aを実現するためには、まずは自社の現状を整理し、自身がしっかりと把握しておくことが大切です。

整理しておくべき事柄の一つが、会社と経営者の取引関係です。例えば、以下のような取引が挙げられます。

会社と経営者の間の賃貸借

経営者個人が所有している土地・建物等を、会社に貸し付け、会社の事業に使用しているのは、非常によく見られるケースです。また、逆に、会社が所有している車等を経営者個人に貸し付けているケースもあります。

この場合、賃貸契約書を締結しているか、賃料の水準、M&A後にどういった形態を取るのか、といった点が、M&Aに際して論点となります。

会社と、経営者と関係のある会社・個人との取引

会社が、経営者が代表や取締役を務める別会社と何らかの取引を行っている場合や、勤務実態のない経営者の親族に給与を支払っている場合などが挙げられます。

これらの取引の価格・条件等が非合理的でないか、M&A後はその取引をどうするのか、といった点が論点となります。

会社と経営者との間の資金の貸借

役員貸付金・役員借入金が存在するケースです。ほか、日々の支払いを役員が立て替えている場合なども該当します。

この場合、金銭消費貸借契約書が締結されているか、約定どおり返済がなされているか、利息は妥当な水準か、M&Aに際して一括返済を行うか否か、といった点が論点となります。

役員報酬(役員賞与・役員退職慰労金を含む)

役員報酬の金額が株主総会決議の範囲内か、関連規程は整備されているかといった点が論点となります。

以上はあくまで一例であり、会社の実態に応じて、整理しておくべき取引関係は異なります。意識せずに行っている取引や、何ら問題がないと認識して行っていた取引が、M&Aに際して、思わぬ障害となる可能性もあります。ただ、どこまで認識し、また整理しておけば良いか、なかなか判断し辛いものであることも事実です。

このような点も、専門家に相談することで、決算書等の資料やヒアリングから、取引関係を洗い出し、かつM&Aに際してどのように扱われるべきか、十分なアドバイスを受けることが可能です。

十分な経験を有するM&Aアドバイザーに相談することで、M&Aの準備をしっかりと整え、かつリスクを最低限に抑えることができます。

文=小岩井雄智(弊社コンサルタント)