オンデック・プレス ONDECK PRESS
ニュース・トピックス

【朝礼で活きる名言・格言】組織を躍動させるリーダーを育てる「土光敏夫」の名言3選

企業の成長には組織力が必要であり、それにはマネジメント能力に優れたリーダーが不可欠です。マネージャー層の育成は企業の将来を左右する大事なテーマですが、経団連の会長を勤めた故・土光敏夫氏の金言はマネージャー層の成長を促す一助となります。

土光氏は、強力なリーダーシップで東京芝浦電気(現・東芝)の経営を再建。晩年には「臨時行政改革推進審議会」の会長に就任し、辣腕を振るいました。これらの素晴らしい功績は、突出した経営眼と実行力、そして巧みな組織マネジメント力によって生み出されたものでした。

氏は「組織は、人によっていかようにも機能を発揮する」と考え、特にコミュニーケーションを重視。社員への声掛けや、会議、社内報などでメッセージを発信し、組織の変革を促すことで多くの成果をあげてきました。そんな土光氏のマネジメントは現代においても有効です。氏の考えを朝礼で伝えれば、組織が有機的に機能しだすことでしょう。

「活力=知力×(意力+体力+速力)」

東京芝浦電気の経営再建を託された土光氏は、まず社員に「すべてにバイタリティを」と要請しました。当時の同社は名門意識の高さが災いし、経費を無駄に使うなど組織としての弛みが散見されていました。氏は「社員の素質は、どこの会社と比べても劣っていない。その素質に活力を吹き込めば素晴らしい働きになる」と檄を飛ばしたのです。

ユニークだったのは「バイタリティとは何か」を明確に定義したこと。土光氏は「活力=知力×(意力+体力+速力)」と式で表現したのです。知力がベースであり、それを成果に結びつけるには行動力が必要。行動力にとって「意志の強さと体力、タイミングを重視する仕事のスピード感」が重要だと唱えました。

実際、氏はこの方程式に従って、前職の石川島重工業でも成功を収めていました。就任してから2年で落ち込んでいた業績に回復の目処をつけると、すぐに世界に目を向け欧米視察を敢行。積極的に技術を導入しつつ、ブラジルで造船の子会社を新設するなど、圧倒的な行動力で事業を拡大しました。

さらには播磨造船所と石川島重工業を合併し、1960年に石川島播磨重工業(現・IHI)を創設。合併発表後の半年間で両社の社員が納得できる組織案を打ち出しました。当時の日本では社長の元に営業部や製造部などが配置される職能制組織が主流でしたが、氏は、当時では異例の事業部制を採用。自ら社員に事業部制組織のメリットを解説するなど活力を発揮したのです。

結果、1963年には石川島播磨重工業は世界一の進水量を誇る造船所となりました。こういった成功体験から、土光氏は活力ある働き方を組織に求めたのです。マネージャー層が活発に働けば、部下の活力も増して組織を活性化させる……バイタリティの重要性とその浸透をマネージャー層に求めることで、自然と職場に活力が溢れ出すことでしょう。

朝礼で伝えたいポイント:成長する組織には活力が必須

・優秀な社員も活力がなければ真価を発揮できない
・無計画に行動することは活力があるとはいわない
・マネージャー層が率先して活力を示せば部下も追従する

朝礼での活用例

おはようございます。さて、突然ですが皆さんに質問です。組織に必要なものとは何でしょうか?
その答えはたくさんあると思いますが、かつて東芝の経営再建を成し遂げた経営者・土光敏夫さんは、「バイタリティ」と考えました。

というのも、土光さんが社長に就任した当時の東芝は、名門意識の高さゆえに、組織が上手く機能していなかったのです。そのような状態を打開すべく、土光氏は「すべてにバイタリティを」と社員に要請。優秀な社員が力を発揮するには組織全体にバイタリティが必要であると考え、次のように語りました。

「活力=知力×(意力+体力+速力)」

土光氏が求めるバイタリティ(活力)とは、基盤となる知力に、それを成果に結びつける行動力が伴ったものであること。行動力も、無計画な行動ではなく「やり抜く意志の強さとそれを支える体力、さらに仕事のスピード感」が重要だと説明したのです。

実際に、土光さんの成功はこの方程式に見事に当てはまっています。彼は、じつは前職でも経営再建を成し遂げています。石川島重工業の社長に就任して2年で業績回復の目処をつけると、すぐに欧米視察を実施。積極的に技術を導入しながら海外に子会社を設け、播磨造船所との合併により現・IHIを創設しました。

圧倒的な速度で成長できたのは、まさにバイタリティが溢れていたからに他ならないでしょう。現在、我が社も苦境に立たされています。しかし、皆さんの知力と行動力によりバイタリティが発揮されれば、業績回復の引き金となるはず。社員、とりわけマネージャー層の方々は、この方程式を胸に仕事に取り組んでください。そうすることで上から下へと活力が伝わり、より多くの成果を残せるはずです。

「チャレンジとレスポンスは上にも下にも心掛けよ」

東京芝浦電気の社長に就任した土光氏は、上司の顔色をうかがうような仕事の進め方や、古い慣行の定着をなくしたいと思っていました。そこで、氏は特にマネージャー層に対して「チャレンジとレスポンスは上にも下にも心掛けよ」と訴えかけたのです。

このチャレンジとレスポンスという言葉は、氏独自の言い回しでした。チャレンジとは「あの仕事はどうなっているか?」「急がなければならないのではないか?」といった、仕事に対する問いかけのこと。一方でレスポンスとは「知りたいことはこれだろう」「相手から何か言ってきそうだな」と思ったときに、先手を打って報告したり意見を述べたりすることを指していました。

日頃のコミュニケーションから思索を巡らし、自主的に発言すること。役職にとらわれず火花が散るような対話がなされることで、組織にダイナミックさが宿ると土光氏は考えていたのです。だからこそ、氏は社員にチャレンジ・レスポンスの徹底を要請。さらに、経営においてもチャレンジ・レスポンスを取り入れていました。

東京芝浦電気の事業部を再編した際、目標管理制度の採用と同時に、事業部の業績評価制度と概況月例報告会も新設。役員陣と事業部が業績について検討を行う場を設けることで、事業部自体が自主的に動き出すことを促したのです。

組織としての精彩を欠いていた東京芝浦電気でしたが、土光氏による組織再編によって職場の雰囲気は一変。社内は活気づき、就任の翌年から急成長を遂げていきました。業績評価制度や月例報告会は現代では取り入れている企業も多いかと思いますが、そこにチャレンジ・レスポンスも加えてみてください。火花が散るコミュニーケーションによって社員の心に火が灯り、炎のように燃え盛る組織へと変貌するかもしれません。

朝礼で伝えたいポイント:「攻めの報告と回答」で組織は活性化する

・まわりの顔色をうかがうコミュニーケーションはNG
・部下・後輩には核心をついた質問を投げかける
・上司・先輩には本質を捉えた回答や報告を行う

朝礼での活用例

今回は、私が最も尊敬する経営者・土光敏夫さんの言葉を、皆さんにお贈りしたいと思います。

「チャレンジとレスポンスは上にも下にも心掛けよ」

ここでいうチャレンジとレスポンスは、一般的な意味ではありません。土光さん流の表現で、チャレンジとは仕事への問いかけ、レスポンスとは自主的な報告や意見を指します。例えば上司が「あの仕事はやり方を変えるべきではないのか?」と核心をついた質問をし、部下が「現状のやり方には〇〇といったメリットがあり、代案には△△というデメリットがあります」と答える。これが、土光さんのいうチャレンジとレスポンスです。

このように上司と部下が思索を巡らしたコミュニケーションをとることで、上司の顔色をうかがうような仕事や古い慣行を排除。流動的でダイナミックな組織となるのだと土光さんは言うのです。

東芝でも、土光さんはこのチャレンジとレスポンスを徹底するように要請しました。加えて、事業部に業績評価制度と概況月例報告会を新設。役員陣と事業部がチャレンジとレスポンスを行う場を設け、事業部自体が自主的に動き出すことを促したのです。これによって東芝は職場の雰囲気が一変。社内は活気づき、土光さんが社長に就任した翌年から急成長を遂げました。

私は、東芝を活性化させた土光さんのチャレンジとレスポンスを、ぜひ皆さんにも実践してほしいと考えています。特に、マネージャー層の方々は部下へのチャレンジ、上司へのレスポンスだけでなく、上司へのチャレンジも忘れないこと。役職や上下関係にとらわれずチャレンジとレスポンスが行き交うようになれば、当時の東芝のように、我が社も成長軌道に乗ることができると思います。

「権限をフルに行使せよ」

石川島播磨重工業でも東京芝浦電気でも、土光氏は事業部制を根幹として経営を推進。当時は役員の承認を得てから事を進めることが一般的でしたが、土光氏は現場を管理する事業部長に一切の職責を移譲していました。その根底には「自分で責任をもってやる幹部を育てることが会社百年の計だ」という考えがあったのです。

そして、「権限をフルに行使せよ」と主張し「責任とは権限を全部使いきることだ」と説きました。これは役員と事業部長に限ることではありません。上司から仕事を任された部下は「すでに権限を与えられているのだから、事を完遂して責任を果たすしかない」と唱えていました。

実際に土光氏は重要な経営判断も部下に一任していました。石川島播磨重工業時代に、造船部門の事業部長から「150億円の工場拡張計画」と「"おさえ"の案としてその半額の計画」の2案を打診された際も「金を作るのがオレの仕事。計画を、責任を持って実行するのがお前の仕事」と回答。資金調達は役員で引き受け150億円の計画を実施させました。

もちろん、土光氏は部下に権限を移譲しながらも「責任はすべて自分が負う」と公言。氏は「怒号敏夫」と呼ばれるほどよく怒っていましたが、部下が全部自分の責任で始末するという態度で取り組んだことであれば「相当なしくじりがあっても怒ることはなかった」そうです。

一方で、部下に仕事を任せた上司には、前述のチャレンジとレスポンスを通して状況を把握することを要請。さらに、今までより多くの情報を提供することも大切だと語りました。現代でも権限移譲は人材育成に有効であると注目を集めていますが、土光氏は50年以上前に自分なりの方法論として確立していたのです。土光氏流の権限移譲の考えを朝礼で伝えれば、マネージャー層に大きな気づきを与えられることでしょう。

朝礼で伝えたいポイント:権限移譲は部下を育てる

・上司は仕事を任せた以上は口出し無用
・部下は責任を持って業務を完遂する覚悟を持つ
・上司は部下を放任せず会話を密に行いフォローする

朝礼での活用例

本日は、マネージャー層の方々に向けてお話しさせていただきます。皆さんは部下にきちんと仕事を一任していますか?

IHIを合併で創設し、東芝を経営再建した経営者・土光敏夫さんは部下の次のように言ったそうです。
「権限をフルに行使せよ」

さらに、土光さんは「責任とは権限を全部使いきることだ。つまり、責任は完遂するべきものだ」と説明。「このような考え方からすれば『責任のみ重くして権限なし』というボヤキは、もはや成り立たない」と語りました。

そうなると当然、部下は任された仕事に対して言い訳ができなくなります。合わせて、土光さんは「自分で責任をもってやる幹部を育てることが、会社百年の計だ」と説いていました。この考えに照らすと、責任を持って働ける人材を育てることは、とてつもない大きな成果なのです。

偉大な経営者である土光さんも、部下に仕事を一任していました。IHIの社長を務めていた頃、造船部門の事業部長から150億円の工場拡張計画とその半額の計画の2案を打診された際も、「金を作るのがオレの仕事。計画を、責任を持って実行するのがお前の仕事」と回答し、150億円の計画を後押ししました。この事業部長の尽力によってIHIは造船世界一を達成していますが、それは土光さんのマネジメントのおかげでもあったのです。

もちろん、権限移譲と部下の放任はまるで違います。土光さんもリーダーの対応として、部下と密にコミュニケーションをとったり、重要な情報を共有したりすることの重要性を唱えていました。

最近では、権限移譲は人材育成に有効であると注目を集めています。もし皆さんが部下の仕事に口を挟んでしまっているようなら接し方を見直し、土光さん流の“任せるマネジメント”を取り入れてみてください。メキメキと成長する部下の姿を見られるかもしれませんよ。

部下を導き育てるリーダーを育成しよう

組織改革だけでなく人材育成の達人でもあった土光氏は、管理職という言葉を好みませんでした。なぜなら「人が管理を許されるのは自分だけ」であると考えていたからです。

加えて、氏は「これからの職場管理は、自己管理の方向でなされるのでなければ、決して成功しない」と主張。リーダーは「部下の一人ひとりが自分自身の管理者になるモチベーターの役割を果たす」ことが求められると唱えたのです。

つまり、今回紹介した3つの名言も、マネージャー層だけでなく、その部下も実践できるように伝わっていく風土を醸成することが大切なのです。それが実現すれば、リーダーが次期リーダーを育てる好循環が生まれ、持続的な組織力の向上が実現するはずです。

土光敏夫(どこうとしお) 1896ー1988
経団連第4代会長。経営難に落ちいっていた石川島播磨重工業(現・IHI)、その親会社に当たる東京芝浦電気(現・東芝)の社長に就任し、両社の経営再建に成功。1981年には鈴木善幸内閣の元で「第二次臨時行政調査会」の会長、1983年には「臨時行政改革推進審議会」の会長も務めた。その人柄や手腕、質素な生活を表して、「ミスター合理化」「行革の鬼」「メザシの土光さん」などと呼ばれていた。

参考図書
「土光敏夫 経営の行動指針(新訂版)」土光敏夫(著)/本郷孝信(編)|産業能率大学出版部
「難題が飛び込む男 土光敏夫」伊丹敬之|日本経済新聞出版
「土光敏夫 質素の哲学」宮野 澄|PHP文庫
「清貧と復興 土光敏夫100の言葉」出町譲|文藝春秋
「土光敏夫 – 信念の言葉」PHP研究所(編)|PHP文庫