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小規模企業白書22年版から、アフターコロナの持続的な企業成長に向けた「事業の見直しと地域内連携」を解説【15分でわかる白書講座】

※このコンテンツは、Youtube・ONDECKチャンネルにて配信中の動画シリーズ「経営者なら知っておきたい 15分でわかる法律・白書・ガイドライン講座」を書き起こしたものです。動画は こちら からお楽しみください

この動画では、M&A仲介・支援を行っているオンデックが経営者の皆様にとって役立つ情報をお届けするために、中小企業白書や、中小M&Aガイドラインなど、膨大な情報が記載された公的な資料などから、経営にとって重要なポイントをピックアップし、15分でわかりやすく解説します。

今回は、2022年版小規模企業白書から、「事業の見直しと地域内連携」について取り上げます。

感染症の流行により、経営環境を取り巻く変化のスピードは一層加速しています。感染防止による直接的な影響に加え、消費者の意識・行動の変化やデジタル化の進展など、アフターコロナに向けた新たな経営環境への対応が求められています。こうした経営環境の変化を転機と捉え、柔軟に販路開拓や新事業創出などに取り組むことが重要です。また、小規模事業者による、地域の持続的な発展を見据えた地域課題解決の取り組みにも着目します。

なお、小規模企業白書では従業員の数が20人以下(商業またはサービス業は5人以下)の事業者のことを「小規模事業者」としています。

本動画では、こちらのテーマに沿って説明します。
 

感染症流行を受けた小規模事業者における事業の見直し

最初に、感染症流行を受けた小規模事業者における事業の見直しについてです。
2020年の売上高と2021年の売上高の見通しについて、それぞれ感染症が流行する前の2019年と比較すると、2020年の売上高と2021年の売上高の見通しのいずれも下回っており、感染症の流行が多くの小規模事業者の売上高に影響を与えていることがわかります。

2020年の売上高と2021年の売上高の見通し

では、売上にマイナスの影響を受けた小規模事業者はどのような事業見直しを行ったのでしょうか。

本動画では、事業見直しの取り組みを
①既存の市場に既存の製品・商品・サービスを投入する市場浸透の取り組み、②既存の市場に新規の製品・商品・サービスを投入する新商品開発の取り組み、③新規の市場に既存の製品・商品・サービスを投入する新市場開拓の取り組み、④新規の市場に新規の製品・商品・サービスを投入する多角化の取り組み
の4つに分類し、各分類の具体的な取組内容を整理します。

それぞれ具体的な取り組みとしては、既存製品・商品・サービスの向上や情報発信の強化、購入数・利用数を増やすための工夫、既存顧客へのコロナ対応商品・サービスの導入や、既存製品・商品・サービスのバリエーションの多様化および付加価値の付与、既存製品・商品・サービスの提供方法の見直しや販売対象の見直しおよびECサイト等の活用、既存の社内リソース・技術を用いた新事業の立ち上げなどが挙げられます。

売上高の改善

調査によると、8割の小規模事業者が事業見直しに取り組んでおり、事業見直しの4分類のうち、「市場浸透」に取り組んだ小規模事業者が7割と最も多く、次いで「新商品開発」「新市場開拓」「多角化」という順になっています。このように事業見直しの取り組みを実施した事業者は、実施していない事業者に比べ売上高が改善しています。

また、事業見直しの実施による経営への効果として、こちらの項目が挙げられます。

事業見直しの実施による経営への効果

これらを踏まえると、事業見直しは「自身の事業を見つめ直す機会となった」「新たな取引が生まれた」「支援機関とのつながりができた」「既存取引先との関係性の強化につながった」など、他者との関係性の構築や強化への効果が期待できます。

事業見直しを実施した小規模事業者が、実施する際に参考にした情報源としては、「商工会・商工会議所」が最も多く、「経営者仲間」、「取引先」と続きます。このように、事業見直しを実施した小規模事業者の多くは、第三者との関わりの中で事業見直し実施のヒントを掴んでいることが推察されます。

実際、事業見直しを実施していない小規模事業者が事業見直しの実施に必要だと感じている要素として、3割以上の小規模事業者が「取り組みに必要な情報」を挙げています。

事業見直しの実施に必要だと感じている要素
今後、事業見直しの実施を検討している小規模事業者、必要性を感じながらも実施できていない小規模事業者は、支援機関や経営者仲間などからの情報を上手く活用しながら、事業見直しの実施に向けて検討を進めることが重要といえます。

持続的な成長を見据えた中長期的な事業見直し

次に、持続的な成長を見据えた中長期的な事業見直しについてです。ここまで売上減少を契機とした事業見直しについて分析してきましたが、ここからは、今後の市場動向を見据えた中長期的な視点から事業見直しの取り組みを分析します。

将来を見据えて事業見直しに取り組む小規模事業者が一定数存在
実際、「将来的な売上の減少や市場の縮小への対応」や「今後成長が見込まれる市場への参入」など、将来を見据えて事業見直しに取り組む小規模事業者が一定数存在していることがわかります。

力を入れたものとしては「市場浸透」が最も多い
また、事業見直しの4分類のうち、最も力を入れたものとしては「市場浸透」が最も多く、既存の市場と既存の製品等の下で消費者や取引先の購買力を高める取り組みを行ったことが見て取れます。

また、約3割が「新市場開拓」または「多角化」に最も力を入れて取り組んでおり、新たな市場の開拓を行った小規模事業者も一定数存在しています。

では、小規模事業者単体ではなく、他の事業者と連携した場合はどうでしょうか。

事業者間連携取り組みの効果
事業者間連携の有無別に、事業見直しの実施による経営への効果を確認すると、事業者間連携を行った小規模事業者の方が、行っていない小規模事業者に比べ、多くの項目で取り組みの効果が出ていることがわかります。

また、「支援機関とのつながりができた」「異業種の他社とのつながりができた」「同業他社とのつながりができた」といった事業者間連携による他者とのつながりだけでなく、「新たな取引が生まれた」「自社の経営資源を把握できた」などの項目においても、事業者間連携の有無による効果の差が大きいことが見て取れます。このように、小規模事業者が事業見直しによって持続的な成長を目指す上で、事業者間連携は重要な要素といえます。

事業見直しの際に連携を行った事業者
一方、事業見直しの際に連携を行った事業者は2割に留まっており、今後のさらなる強化が期待されます。

事業見直し時に小規模事業者が直面する課題として、「知識・ノウハウの不足」や「販売先の開拓・確保」に次いで、23%の小規模事業者が「人材の確保」を挙げています。

ここで、小規模事業者の人材不足を解消する手段として、アウトソーシングの活用が考えられます。感染症流行以降、事業見直しにかかわらず最も不足していると感じる経営資源として、20%以上の小規模事業者が「人材」を挙げています。
すでにアウトソーシングに取り組んでいる分野としては、「生産・管理」「経理・財務」の順に多いことがわかります。アウトソーシングの効果としては、多くの分野で「売上を伸ばすことができた」という回答が多く、経理・財務や総務・庶務においては「コストを削減することができた」という回答が多くあり、アウトソーシングの取り組みの効果がうかがえます。

小規模事業者による地域課題の取り組み

続いて、小規模事業者による地域課題の取り組みについてです。前章で取り上げた持続的成長を目指す上で、自身が属する地域の課題解決に取り組むことにより期待される、小規模事業者の利益と、その課題について取り上げます。

小規模事業者の割合
日本国内の小規模事業者の割合は8割を超えており、地域経済を支える存在であるといえます。すでに約6割の小規模事業者が地域課題解決に向けた取り組みを行っていることがわかります。

小規模事業者が実際に取り組んでいる地域課題としては、「まちづくり」が最も多く、次いで「産業振興」となっています。

また、地域課題解決に向けた取り組みを始めた理由としては、「地域の持続的な発展に貢献するため」が最も多く、各小規模事業者が地域課題解決に向けた取り組みを行うにあたり、「事業ではなく、地域貢献の一環として取り組んでいる」と回答した小規模事業者が約6割と最も多いことから、地域課題解決に向けた取り組みを事業としてではなく、地域貢献の一環として取り組む傾向にあることが見て取れます。

地域課題解決への取り組みを事業として捉えている小規模事業者
このように、現状では事業として取り組んでいる小規模事業者は多く存在しない一方で、地域課題解決への取り組みを事業として捉えている小規模事業者においては、他者に比べ黒字の割合が高いことがわかります。

具体的な地域課題としては、「産業振興」「まちづくり」「福祉・教育」「環境保護」などがあります。

現在未着手の課題のうち、解決すべき地域課題が存在すると回答した小規模事業者は8割以上に上り、中でも「産業振興」と回答した割合が最も高いことがわかります。
しかし、その地域課題解決の取り組みに割く人材の不足が今後の課題となっています。

地域の持続的な成長に向けた連携の方向性

次に、地域の持続的な成長に向けた連携の方向性についてです。

地域内の事業者や団体等との連携状況
地域内の事業者や団体等との連携については、6割以上の小規模事業者が「既に連携を行っている」または「連携を検討している」と回答している一方、地域外の事業者や団体等との連携については、「連携していない・連携の予定はない」と回答した小規模事業者が約6割に上っています。

地域内における連携先については、商工会議所、商工会が最も多く、次に事業者となっている一方、地域外における連携先については、事業者が最も多く、次に商工会議所、商工会、自治体となっています。連携先の探し方としては、知人や取引先、支援機関(公的支援機関、金融機関、士業等)が多くなっています。

ここで、小規模事業者が地域課題解決の取り組みにおいて連携する理由としては、「地域を巻き込んだ大きな取り組みへの発展」や「地域住民や外部事業者などからの信用度の上昇」にメリットを感じているためだということがわかります。


一方、他者と連携を行っていない小規模事業者が新たに連携を行う際に感じる障壁として、「自社の中で対応する人手の不足」や「誰と連携すればよいかわからない」といった課題が浮き彫りになっており、今後の解決が期待されます。

今回取り上げたテーマのまとめ

小規模事業者白書2022年版のまとめ
最後に、今回取り上げたテーマについてのおさらいとまとめです。

第一に、小規模事業者における事業の見直し状況として、多くの小規模事業者が2021年においても引き続き感染症の流行による売上高への影響を受けているものの、売上減少を契機に事業見直しに取り組んでおり、その効果として売上高の改善や他者との関係性の構築や強化が挙げられる旨、説明しました。

第二に、持続的な成長を見据えた中長期的な事業見直しとして、小規模事業者が持続的な成長を目指す上では、事業者間連携が重要な要素の一つであり、連携による新たな取引の創出や取引先との関係強化といった経営上の効果について説明しました。

第三に、小規模事業者による地域課題の具体的内容やその取り組みの自社内における位置付け、利益状況を概観しました。

第四に、地域の持続的な成長に向けた連携の方向性として、小規模事業者が地域課題解決に向けた取り組みを行う際の他の事業者との連携状況や効率的な連携の進め方について分析しました。地域の持続的な発展に向けては、小規模事業者が単独で活動するのではなく、多様な主体と連携していくことが必要であるといえます。

このように、小規模企業白書には、明日から役立つ情報が、多数掲載されています。今を知り、これからを考えることで、企業が新しい価値を生み出し、未来の経営につなげることができます。ぜひ、明日からの経営にお役立てください!

文=オンデック情報局