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【朝礼で活きる経営者の名言・格言】成果を生む人材を育成する「小林一三」の名言・格言

成果を生む優秀な人材を育てるには教育制度だけでなく、社員の成長意欲を高めることも重要です。そのためには社員が目指すべき姿を明確にすると効果的。目標を具体化することで努力の方向性が定まり、社員も急成長を遂げることでしょう。

阪急東宝グループ(現・阪急阪神東宝グループ)の創業者である故・小林一三氏は、鉄道事業に加えて沿線住宅地の開発・ローン販売や百貨店の開業などを手掛けた伝説的な経営者。現在では当たり前となった「鉄道と都市開発を合わせたビジネスモデル」を確立しました。さらにいまの宝塚歌劇団や東宝映画を設立するなど多角経営の先駆けであり、時代を先取りするアイデアマンでした。

同時に小林氏は人材育成の名手であり、折に触れ社員が目指すべき姿として、優秀な人材の条件や出世する人物像について明示してきました。氏の言葉を朝礼で活用すれば、社員に大きな気づきを与え、成長の道標となるはずです。

「現状に処するという事が一番大切だ」

小林氏はある青年との対談で「人より優れるということは、先天的に決められているものか、後天的な努力で可能なものか」と質問されました。それに対して、氏は「現状に処するという事が一番大切だ。与えられた仕事にベストを尽くすことだ」と回答しました。

その理由については「一つの仕事にベストを尽くしていると、その仕事を発展させる考えが浮かぶようになる。つまり事業に対する感覚が鋭敏になってくる」と説明。同時に、今の仕事と少しも関係ない事を計画するのは「空想」だと言い放ちました。

実際、小林氏の多角的な事業展開も、あくまで本業である鉄道事業の延長線上として実施。例えば、世界初であった駅直結のデパート経営も「駅に百貨店があれば、もっと気軽に使ってもらえるのでは?」と、鉄道の経営にベストを尽くした結果でした。

自身の経験から氏は「つまらぬと思われる仕事でもベストを尽くせば、次の仕事の芽が培われる」とし、「現状の仕事をいい加減にしているようでは大成を期しがたい」と述べています。

仕事に全力で取り組めば、優秀な人材となれる……こうした小林氏の言葉を借りて、今の仕事が将来の自分への投資であることを社員に伝えれば、仕事の姿勢がより情熱的になるはず。合わせて「目標達成に向けて取り組む姿勢を評価する」と明言すれば、さらなるモチベーション向上も期待できます。

朝礼で伝えたいポイント:現在の仕事は将来への投資

・仕事に全力で取り組むことが成長への近道
・自分が任された仕事の範囲内で創意工夫すること
・仕事にいい加減に取り組む人は大成しない

朝礼での活用例

おはようございます。本日は私が尊敬する小林一三さんの言葉を伝えたいと思います。

小林さんは現在の阪急阪神東宝グループの創始者にあたる人物。主に戦前に活躍した経営者で、日本で初めて住宅ローン制度を導入して沿線宅地を開発したり、世界で初めて駅直結の大衆デパートを開業したりと時代を先取るアイデアマンでありました。

そんな小林さんは「現状に処するという事が一番大切だ」と言うのです。その理由について「着想はあくまで現状に即して自分にできる範囲のことでなければ駄目。それは現在の仕事にベストを尽くす中から生まれてくる」と説明します。

前述した住宅ローン導入も、鉄道事業の経営に全力を尽くした結果でした。当時の阪急電車の線路沿いは農村地帯で利用者が少なかった。そこで小林さんは「郊外に住宅地を作り、その居住者を市内へ電車で運ぼう」と画策。資産家しか持ち家は持てない時代に住宅ローンを導入し、移住者を募ったのです。

駅直結のデパート、現在の阪急百貨店も同様で、「駅に百貨店があれば、もっと気軽に使ってもらえるのでは?」と鉄道利用者を増やすための一施策でした。イノベーションを起こそうと、現在の仕事から離れたことを計画するのは上手くいかないことを知っていたのです。

一つの仕事にベストを尽くしているからこそ、その仕事を発展させる考えが浮かぶようになる。これは皆様の仕事にも置き換えられます。今の仕事に全力で挑み、自分の担当となる仕事の範囲内で改善を続ければ、それが新しい仕事の芽となります。逆に、現状の業務に納得がいっていないとしても手を抜いてしまっては次に繋がりません。

当然、私も目標達成に向けて取り組む姿勢を評価します。ぜひ現在の仕事を未来への投資と思って、全力で取り組んでください。

「社会生活において成功するには、その道でエキスパートになる事だ」

小林氏は起業以前、三井銀行(現・三井住友銀行)に勤めていました。ただ、当時は「平凡なサラリーマン」であったそうですが、その経験もあってか、氏は従業員としての心持ちについて多く言及しています。

小林氏は自著にて「サラリーマンに限らないが」と前置きしながら「社会生活において成功するには、その道でエキスパートになることだ」と主張。それは「ある一つのことに対して、その人でなければならない人間になることだ」と続けたのです。

そして銀行員を例に挙げて「誰よりも為替に詳しくなれば、上司を含めて誰もが為替については話を聞きに来る存在になれる」と補足。「自分の地位が安定するのはもちろん、昇進の道も開ける」と説き、「業界一のエキスパートとなれば、どこからでも迎え入れられるだけの可能性がある」と言いました。

加えて氏は一元的な教訓を嫌い、「各人の持つ天分に磨きをかけ、光を発揮せしむことによって特殊の人物を作ること」を重視しました。あらゆる事業は、そうした“人格の発露”によって成り立つと考えていたからです。

自分の長所を活かしたエキスパートを目指す大事さを社員に伝え、そのことに専念するよう指示してみてください。努力の「選択と集中」によって成長が加速するだけでなく、他にない技術やアイデアを持つ人材へと育つ可能性が高まることでしょう。

朝礼で伝えたいポイント:ビジネスにおいても「芸は身を助ける」

・現在の仕事を通じて、専門的な知識・技術を身につけよう
・特定分野のエキスパートになれば出世できる
・自分の個性を顧みて、長所を磨くことに専念する

朝礼での活用例

皆さんは仕事上で得意分野はございますか? 「芸は身を助ける」という言葉はありますが、現在の阪急阪神東宝グループの創始者にあたる小林一三さんは次のように語っています。

「社会生活において成功するには、その道でエキスパートになる事だ」

小林さんは経営者として非常に優れ、その手腕を評価されて戦前の第2次近衛内閣では商工相にも任命されています。しかし、起業前の銀行員時代は左遷を経験するなど、いたって平凡だったといいます。

そういった経験もあってか小林さんはエキスパートになること、つまり「ある一つのことに対して、その人でなければならない人間になること」が重要だと主張します。

銀行員を例に挙げて「誰よりも為替に詳しくなれば、上司を含めて誰もが為替については話を聞きに来る存在になれる。自分の地位が安定するのはもちろん、昇進の道も開ける」と説明。「業界一のエキスパートとなれば、どこからでも迎え入れられるだけの可能性がある」と続けました。

さらに、そんなエキスパートになるには自分の“天分”を磨く必要があるといいました。自分の長所を活かし、他人に負けない得意分野を持った者こそ「時代が求める人材」だと断言しているのです。それは現在においても同様でしょう。

そこで私からのお願いです。私は経営のエキスパートを目指すので、皆さんも自分の個性に合ったエキスパートになってください。結果、皆さんのキャリアが素晴らしいものになるだけでなく、我が社も代わりの利かないエキスパート集団になれるはずです。

「出世の道は信用を得ることである」

ビジネスの基本は信用を積み重ねること。そう語る経営者は非常に多く、小林氏も社内外を問わず「出世の道は信用を得ることである」と言い切っています。「信用は学問では得られない」とする一方で、「誠意を持ってすべてに当たれば得られる」と言います。

小林氏は自身が通った西洋料理店を例に挙げ、信用の大切さを説きました。40歳以上の顧客が7割であった同店では、その年齢層に合わせて野菜を多く使って献立を組み、顧客への案内にも細心の注意を払っていました。その心がけを見て、氏は仕事ぶりによって信用が得られることを実感。「商売のやり方にお客は無関心ではない」として「お店は時を経てますます栄えた」と結びました。

氏はビジネスマンとして信用を得るための3条件を挙げています。第一の条件は「正直である」こと。正直といっても愚直であってはならず、人の“不正直”を見抜く力や臨機応変さが必要だと説明しました。

第二の条件は「礼儀を知る」こと。手荒な言動は真面目に働くことを前提とする社会で評価されないといいます。第三の条件には「物事を迅速に正確に運ぶ」ことを挙げ、頼まれた仕事を催促されたり、時間外まで働いたりするようでは信用を得られないと釘を刺しました。
会社とは人の集合体。会社の信用とは商品やサービスだけでなく、社員に対する信用も多分に含みます。つまり、顧客から信用を得られる社員は、会社の大きな財産と言えます。そんな社員の育成に小林氏の掲げる3条件は有効。どのような人が信用されるかを理解することで、社内外から頼られる人物に成長してくれると思います。

朝礼で伝えたいポイント:社会生活は「至誠天に通ず」

・誠心誠意働くことで信用を得られる
・お客は仕事の仕方に無関心ではない
・「正直さ」「礼儀正しさ」「迅速さ」が信用の3条件

朝礼での活用例

社内だけでなく、社会で出世をする上で最も重要なものは何でしょうか? 阪急阪神東宝グループの創始者にあたる小林一三さんは「出世の道は信用を得ることである」と話しています。

さらに、小林さんは信用を得るための3条件も挙げています。一つ目の条件は「正直である」こと。もちろん馬鹿正直は良くないとし、人の嘘を見抜く力や、臨機応変さも求めていました。

二つ目は「礼儀を知る」こと。多くの会社は「真面目に生活する人だけで仕事できるように工夫されている」ため、手荒な言動の人は評価されないのです。そして、三つ目は「物事を迅速に正確に運ぶ」ことです。頼まれた仕事を催促されたり、時間外まで働いたりするようでは信用を得られない。定められた時間内で成果を出すべきだといいました。

お客様は決して馬鹿ではありません。私たちの仕事ぶりを、きちんと見ています。だからこそ、誠心誠意働くことが肝心。小林さんが唱える3条件を心に留めて、仕事に取り組んでください。そうすればお客様だけでなく、社内の仲間や上司からも頼られる人に成長できるはずです。

「堅固なる決心」が優秀な人材を生む

小林氏は自社の経営を担う人材を一から育てることに成功していますが、決して特別な指導をしたわけではありません。ただ、「何人もやり得ないようなことをやってみせるという、堅固なる決心」を求めました。それは苦痛に打ち勝つ忍耐力ではなく「日常生活を厳守するだけの決心」だったのです。

任された仕事を最後までやり切ることこそが実力。小林氏の言葉を通じて、地道な努力を積み重ねるよう指導すれば、優秀な人材を育む環境が自然と醸成されるはずです。

文=オンデック情報局

小林一三(こばやしいちぞう) 1873-1957
阪急東宝グループ(現・阪急阪神東宝グループ)の創業者。箕面有馬電気軌道(現・阪急電鉄)の創立に参加。後に社長に就任した。世界初のターミナルデパート「阪急百貨店」を開業するだけでなく、宝塚歌劇団や東宝映画なども創設するなど多角的な経営を実践。太平洋戦争直前の1940年には第2次近衛内閣の商工相に就任。戦後の幣原内閣でも国務相・戦災復興院総裁を務めた

参考図書
「新版「私の行き方」創業者を読む」小林一三|PHP文庫
「逸翁自叙伝 阪急創業者・小林一三の回想」小林一三|講談社学術文庫
阪急電鉄の創業者「小林一三」」|阪急電鉄