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中小企業白書22年版から、経営に今求められる無形資産「企業の成長力を促す経営力と組織」を動画で解説【15分でわかる白書講座】

※このコンテンツは、Youtube・ONDECKチャンネルにて配信中の動画シリーズ「経営者なら知っておきたい 15分でわかる法律・白書・ガイドライン講座」を書き起こしたものです。動画は こちら からお楽しみください

この動画では、M&A仲介・支援を行っているオンデックが経営者の皆様にとって役立つ情報をお届けするために、中小企業白書や、中小M&Aガイドラインなど、膨大な情報が記載された公的な資料などから、経営にとって重要なポイントをピックアップし、15分でわかりやすく解説します。

今回は、2022年版中小企業白書から、「企業の成長力を促す経営力と組織」について取り上げます。

中小企業が付加価値を高めながら成長していく方法として、有形資産への設備投資などに加え、ブランドや人的資源などの「無形資産」への投資も挙げられます。OECD報告書によると、無形資産への投資は、有形資産への投資に比べ、生産性をより向上させるといった分析も示されています。
本動画では、企業価値向上を生み出すブランドや人的資源などの「無形資産」について、こちらのテーマに沿って説明します。

 

経営理念・経営戦略の浸透

最初に、経営理念・経営戦略の浸透です。
白書では、経営理念(ビジョン)について、3つの要素から構成されると説明しています。

第一に、変化することはほぼない、組織の指針となる原則と信条であるコアバリュー、第二に、100年に亘って企業の拠り所となる、組織が存在する根本的な理由・存在意義であるパーパス、第三に、10〜25年程度で変化する、組織が目指す明確なゴールであるミッションです。

経営理念・経営戦略

中小企業においても、約9割の企業が経営理念を明文化していますが、経営理念が真の効果を発揮するためには、組織内できちんと理解される「明確さ」、および、組織メンバーが賛同し、組織に浸透しているという「共有」の2つが重要です。なぜなら、経営理念の組織内での浸透状況に応じて、企業の労働生産性が大きく異なり得るからです。

こちらのグラフは、経営理念が全社的に浸透している企業ほど、労働生産性の上昇幅が大きいことを示しています。

労働生産性の上昇幅

また、経営理念に限らず、経営戦略の共有・浸透も重要です。こちらのグラフが示す通り、組織内での経営戦略の浸透度が高いほど、労働生産性が高いことがわかります。

経営戦略の浸透度と労働生産性

また、経営戦略の進捗度合いを測定し、PDCAを回すにあたり、KPIの設定・活用も重要です。こちらのグラフが示す通り、KPIについても、組織内での認知度が高いほど、労働生産性が高いことがわかります。

KPIの組織内での認知度と労働生産性

以上で見たように、企業の生産性を高めるためには、経営理念・経営戦略・KPIのそれぞれについて、経営層だけでなく、個々の従業員に至るまで、企業内での浸透を図ることが重要です。

ブランドの構築と維持

続いて、ブランドの構築と維持です。

白書では、ブランドについて、「顧客に認識される、企業や商品・サービスなどのイメージの総体」と定義しています。
ブランドの構築・維持の取り組みは、企業の粗利率の水準に影響を与えます。こちらのグラフの通り、ブランドの構築・維持の取り組みを図っている企業の方が、高い粗利率を実現しています。

また、こちらのグラフは、ブランドの構築・維持の取り組みの有無による取引価格への影響を示しています。ブランドの構築・維持の取り組みは、取引価格の維持・引上げに有益であるということができます。

ブランドの構築・維持の取り組みの有無による取引価格への影響

以上で見たように、ブランドの構築・維持の取り組みは、粗利率の改善や取引価格への影響など、企業価値向上を図る上で重要にも関わらず、現状、中小企業での取り組みは、4割弱に留まっています。
このため、ブランドの構築・維持に積極的に取り組むことが、競合との差別化要因となり得ます。

では、具体的には、どのような形でブランドの構築・維持に取り組むことが考えられるでしょうか?
こちらは、ブランドの構築・維持の取組内容を示したものです。

ブランドの構築・維持の取組内容

「自社ブランドの立ち位置の把握」や「ブランドコンセプトの明確化」など、ブランドの構築・形成に関わるものもありますが、「顧客や社会へのブランドメッセージの発信」が最上位に位置している通り、外部への情報発信として、ブランドが活用されていることがわかります。
こちらは、ブランドの構築・維持にあたり、活用されているブランド要素です。

企業が活用しているブランド要素

ロゴ・マークや商品・サービスの固有名称、ブランドカラーなどの使用を通じて、企業や商品・サービスのブランド構築・維持が図られていることがわかります。

ここで、少し視点が変わりますが、新商品・サービスなどの開発にあたり、顧客の声に耳を傾けることの重要性について確認します。
こちらのグラフは、顧客志向の商品開発の実践状況とブランドの取引価格への影響を表すものです。

顧客志向の商品開発の実践状況とブランドの取引価格への影響

顧客志向の商品開発が実践できているほど、ブランドの取引価格にプラスであるといえます。

デザイン経営による効果

続いて、デザイン経営による効果です。
白書によると、デザイン経営とは、「デザインを企業価値向上のための重要な経営資源として活用する経営」です。ここでいうデザインには、企業が重視する価値や意志を表現するブランド構築に資するデザイン、および、顧客の潜在ニーズを元に事業を構想するイノベーションに資するデザインの2つがあります。

現状、デザイン経営の認知度は13.7%、取組割合は12.2%に留まっており、浸透過程にあるといえますが、前章で見たブランド構築と親和性が高い経営手法といえます。
こちらは、デザイン経営による効果をまとめたものです。

デザイン経営による効果

第1位は「企業のブランド構築やブランド力向上」であり、ブランドの構築・維持を図る上で、デザイン経営を有効に活用できる余地があります。
また、こちらはデザイン経営の取組状況とブランドの取引価格への影響を整理したものです。

デザイン経営の取組状況とブランドの取引価格

デザイン経営への取り組みにより、ブランド価値が向上し、取引価格の維持・向上につながっていると考えられます。

人的資源管理(HRM)と企業業績の関係

続いて、人的資源管理と企業業績の関係です。

企業の経営資源は「ヒト・モノ・カネ・情報」に大別されることが多いですが、「ヒト」は他の経営資源と異なり、教育・訓練を通じて能力向上を図る余地があります。「ヒト」を重要な経営資源と捉え、人事施策を体系的に構築・運用する仕組みは、人的資源管理(HRM)と呼ばれます。多くの研究で、HRMと企業業績には、正の相関があること、すなわち、HRMの推進が企業価値の向上につながり得ることが示されています。

また、従業員の能力開発の推進は、従業員のモチベーション向上にも寄与します。こちらは、能力開発への積極性と従業員の業務意欲の関係を表したグラフです。

能力開発への積極性と従業員の業務意欲

企業の能力開発への積極姿勢が、従業員のモチベーション向上につながっていることがわかります。
企業による従業員の能力開発への姿勢は、能力開発方針や求める人材像に現れます。能力開発に積極的な企業ほど、能力開発計画・方針があり、それを明文化している傾向にあります。また、同様に、求める人材像についても公表・明文化している傾向にあります。能力開発計画・方針や求める人材像を明文化・明確化している企業ほど、売上高増加率が高いという結果が示されています。この背景には、企業価値向上に資する能力開発計画・方針の設定・実行、求める人材像の具体化、従業員のモチベーション向上などがあると考えられます。
また、こちらは人事評価制度と売上高増加率の関係です。

人事評価制度と売上高増加率

企業規模に関わらず、人事評価制度のある企業ほど、高い売上高増加率を示しています。この背景として、人事評価制度を通じた経営理念や経営戦略の浸透、個々の従業員の能力開発の進展などがあると考えられます。
また、こちらは、人事評価制度の見直し状況と売上高増加率の関係です。

人事評価制度の見直し状況と売上高増加率

定期的に人事評価制度を見直し、外部環境や経営方針に応じて人事評価制度を見直している企業ほど、売上高増加率が高いことがわかります。

このように、従業員の能力開発の推進や適切な人事評価制度の運営は、企業の業績向上に貢献するものといえます。

経営者に求められるスキル

続いて、経営者に求められるスキルです。
白書では、経営者に求められる知識・スキルとして、6つの項目を挙げています。

経営者に求められる6つの知識・スキル

第一に、臨機応変に対応し、意思決定する力です。経営者は、日々変化する経営状況を柔軟に見極め、複数の選択肢を比較検討し、組織を代表して責任を持って意思決定する必要があります。

第二に、傾聴し、人を導く力です。経営者は、部下や関係者と信頼関係を構築し、リードしていくことが求められています。

第三に、論理的に考えて本質を見抜き、適切に表現する力です。経営者は、正解のない経営課題について、理論的に問題の本質に迫り、それに対する自分の考えを周りにわかりやすく伝えるスキルが必要です。

第四に、計数管理・計画能力です。経営者は、資金繰りをはじめとする財務状況を適切に把握し、自ら経営計画や投資計画を立案できる能力が求められています。

第五に、問題意識を持ち、自己変革する力です。経営者は、周囲の状況に積極的に関心を持ち、変化を恐れず、得られた情報を元に自社の経営課題の解決のために実践・応用する必要があります。

第六に、業界に精通する力です。自社が属する業界や競合他社の動向を適切に把握する能力が求められています。

ご自身の能力と照らし合わせ、強みの強化や弱みの補完にご活用ください。

今回取り上げたテーマのまとめ

最後に、今回取り上げたテーマについてのおさらいとまとめです。

まとめ

今回は、中小企業白書から「企業の成長力を促す経営力と組織」をテーマとして解説しました。
第一に、企業の経営理念・経営戦略の組織内での浸透が、業績向上につながる旨、説明しました。
第二に、ブランドの構築・維持の取り組みが企業価値の向上に資する旨、説明しました。
第三に、ブランドの構築・維持と親和性のある経営手法として、経営にデザインを取り込むデザイン経営の考え方について説明しました。
第四に、人的資源管理(HRM)として、従業員の能力開発や人事評価制度の構築が、従業員のモチベーションや企業業績の向上に寄与する旨、説明しました。
第五に、経営者に求められるスキルとして、こちらの6つについて説明しました。

このように、中小企業白書には、明日から役立つ情報が、多数掲載されています。今を知り、これからを考えることで、企業が新しい価値を生み出し、未来の経営につなげることができます。ぜひ、明日からの経営にお役立てください!

文=オンデック情報局