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【15分でわかる法律・白書・ガイドライン講座】経営者なら知っておきたい中小企業庁「中小PMIガイドライン」の概要を動画で解説

※このコンテンツは、Youtube・ONDECKチャンネルにて配信中の動画シリーズ「経営者なら知っておきたい 15分でわかる法律・白書・ガイドライン講座」を書き起こしたものです。動画は こちら からお楽しみください

この動画では、M&A仲介・支援を行っているオンデックが経営者の皆様にとって役立つ情報をお届けするために、中小企業白書や、中小M&Aガイドラインなど、膨大な情報が記載された公的な資料などから、経営にとって重要なポイントをピックアップし、15分でわかりやすく解説します。

今回は、「中小PMIガイドライン」について取り上げます。

経営者の高齢化が進む中小企業の事業承継は、社会的な課題として認識されています。
後継者不在の企業が、事業承継の選択肢として第三者承継、すなわち、M&Aを活用する場合の手引きとなる指針として、2020年3月に中小M&Aガイドラインが策定されました。

一方、事業を承継した買収側企業にとって、M&Aの完了は「スタートライン」に過ぎず、M&A後の統合作業(PMI)を適切に実施することが重要です。この点、M&Aを「成功」に導くためには、「M&Aの完了」と「PMIの実施」を両輪として進める必要があります。しかしながら、中小企業においてはPMIの重要性が十分に認識されておらず、また、PMIに関する支援機関も不足しています。

こうした状況を踏まえ、2022年3月「中小PMIガイドライン」が策定されました。

本動画では、「中小PMIガイドライン」について、こちらのテーマに沿って説明します。
 

中小PMIガイドラインの概要

第1に、中小PMIガイドラインの概要です。

中小PMIガイドラインは、中小企業におけるPMIの「型」をまとめたものです。

中小PMIガイドラインは、大きく総論と各論の2つから構成されています。総論では、PMIの概要、およびPMIの位置付け・進め方を時系列で整理しています。各論では、推進体制・基礎編・発展編の3部構成で、具体的なPMIの進め方が説明されています。

中小PMIガイドラインのポイントとして、こちらの5点が挙げられます。

第1のポイント 初のガイドライン

第1のポイントは、中小PMIに関する初のガイドラインであることです。
前述の通り、中小規模で、後継者が不在の譲渡側企業のためには、中小M&Aガイドラインが策定済みです。今回、事業を承継する買収側に向けて、M&A後のPMIの「型」を示す目的で、中小PMIガイドラインが策定されました。

第2のポイント 時系列での整理

第2のポイントは、時系列での整理です。
中小PMIガイドラインでは、M&A・PMIのプロセスを大きく4つに分類し、PMIの観点から、どのタイミングでどのようなことを実施すべきか整理しています。

第3のポイント 基礎編と発展編

第3のポイントは、基礎編と発展編から構成されている点です。
中小PMIガイドラインの各論では、事業を円滑に引継ぐ上で重要な取組を整理した「基礎編」、および、基礎編の内容を押さえた上で、より高度な取組を示した「発展編」が用意されています。

第4のポイント 3つの統合領域

第4のポイントは、3つの統合領域での整理です。
基礎編・発展編の内容は、経営統合・信頼関係構築・業務統合の3つに分類されています。特に基礎編では、中小PMIを実施する上で重要となる信頼関係構築に多くのスペースが割かれています。

第5のポイント 成功事例・失敗事例

第5のポイントは、成功事例・失敗事例です。
中小PMIガイドラインでは、各所で多くの成功事例・失敗事例が紹介されています。成功事例からPMI成功のエッセンスを得つつ、失敗事例からPMIの重要性を理解することもできます。

中小PMIガイドライン総論

続いて、中小PMIガイドライン総論です。

中小PMIガイドラインは、大きく総論と各論から構成されていますが、総論では、主にPMIの概要と中小PMIの進め方がまとめられています。

PMIの概要

まず、PMIの概要です。

そもそもPMIとは、Post Merger Integrationの略称であり、主にM&A完了後に行われる統合作業を意味します。PMIは、M&Aの目的を実現させ、統合の効果を最大化するために必要なプロセスと言えます。

PMIを意識する上で重要な点は、「M&Aの完了」と「M&Aの成功」は異なるという点です。譲渡側から買収側への承継を経ることで、M&Aは「完了」します。一方、買収側がM&Aの目的を実現、かつ統合効果を最大化し、M&Aを「成功」させるためには、適切なPMIの実施が不可欠です。

中小PMIの進め方

次に、中小PMIの進め方です。

中小PMIガイドラインでは、M&A・PMIのプロセスについて、大きく2つに分けた上で、それぞれをさらに2つに細分化し、4つのプロセスを示しています。

このうち、PMIについては、「プレPMI」「PMI」「ポストPMI」の3つに分けられています。プレPMIは、M&Aの実行段階から完了まで、PMIは、M&A完了からおおむね1年間の統合作業の集中実施時期を指し、また、ポストPMIは、それ以降の中長期的な時間軸を意味します。

ここで重要な点は、PMIは「プレPMI」という形で、M&Aの完了前の段階から始まっている点です。PMIの検討開始時期とM&A効果・シナジー効果との相関性を調べたこちらのデータによると、M&A完了前にPMIを開始することが、M&A効果・シナジー効果の実現に重要であると言えます。

中小PMIガイドライン各論

続いて、中小PMIガイドライン各論です。

各論では、推進体制・基礎編・発展編が取り上げられています。本動画では、基礎編を中心に解説します。

基礎編では、M&A初期検討からPMIまでの3つのプロセスにおける具体的な統合作業について、経営統合、信頼関係構築、業務統合の3つに分けて整理しています。特に、信頼関係構築に多くのページが割かれている点に特徴があります。

経営統合

ここでは、経営統合から説明します。

経営統合のゴールは、「経営方針の言語化」および「関係者への説明」の2点です。まず、M&A初期検討のプロセスでは、買収側が、承継する会社の新たな経営方針について言語化し、社内外の関係者に説明する必要があります。

その際のポイントは、これまでの経営方針との違いが関係者に与える影響をできるだけ緩和することです。買収側が示す新たな経営方針が従来の経営方針を否定するようなものである場合、譲渡側の従業員の信頼を失うリスクがあるため、十分な注意・配慮が必要です。

信頼関係構築

次に、信頼関係構築です。

ここでは、譲渡側の経営者、従業員、取引先の3者に分けて整理されています。

経営者との信頼関係構築については、第1に「協力関係の構築」、第2に、M&A後の「役割・在籍期間の明確化」がゴールとなります。

信頼関係構築に際してのポイントとしては、譲渡側の経営者に対する尊敬の念を忘れず、同時に、買収側の考えを率直に伝える点です。

また、M&A後の役割・在任期間については、M&A完了前に合意しておくことも重要です。譲渡側の経営者が、買収側の想定以上の役割や在任期間を担うことになった場合、前経営者の影響力が残り、買収側が進める経営改革の障害となり得るリスクもあります。

次に、従業員との信頼関係構築です。

ここでは、「不安・不信感の払拭」と「納得感・共感の獲得」がゴールとなります。

具体的な取組としては、プレPMIの段階でのキーパーソンとのコミュニケーション、PMI段階での説明会の開催、個別面談の実施、即効性のある就労環境の改善などを実施します。

従業員との信頼関係構築のポイントは、M&Aに関する情報について、「遅滞なく」「全員に」「同時に/等しく/正確」に伝えることです。
また、従来のやり方や業務を否定しないことも重要です。従業員の信頼を得られない場合、モチベーションの低下や離職につながり、事業の継続に支障を来たすリスクがある点、留意が必要です。

続いて、取引先との信頼関係構築です。

ここでは、「取引の継続」と「取引条件の把握」がゴールとなります。

具体的な取組として、プレPMIのプロセスで重要な取引先について把握し、PMIのプロセスでM&Aの説明を行い、信頼関係の構築を図ります。

取引先との信頼関係構築のポイントとして、譲渡側経営者からの取引先の引継ぎ、速やかな挨拶の実施、譲渡側の人物からの協力の獲得です。取引先との信頼関係構築に失敗した場合、取引の縮小や解消など、事業運営上、重大な問題となり得るため、慎重かつ丁寧な対応が重要です。

業務統合

続いて、業務統合です。

M&A完了後の事業の円滑な引継ぎに向けた課題に対応します。業務統合のゴールは、引継いだ事業を安定的に運営し、改善すべき点を改善することです。

具体的な取組として、プレPMIのプロセスで、デューデリジェンス等を通じた事業の把握に努め、PMIのプロセスで、事業内容についてより広範かつ詳細に把握し、業務の改善に取り組みます。

業務統合のポイントとしては、M&A完了前のDDでは検知できなかったことに留意しつつ、要改善事項については優先順位をつけて改善に取り組むことが挙げられます。

以上が、PMIガイドラインの各論における基礎編の内容です。

発展編は、ポストPMIのプロセス、すなわち、M&A完了から1年経過後以降の中長期を対象として、経営統合・業務統合の観点から、主にシナジー効果実現のための施策が整理されています。シナジー効果については、売上シナジー・コストシナジーについて、14項目に細分化され、体系的に整理されており、実務上も参考となるものです。

今回取り上げたテーマのまとめ

最後に、今回取り上げたテーマについてのおさらいとまとめです。

今回は、中小PMIガイドラインをテーマとして解説しました。中小PMIガイドラインは、「M&Aの完了」と「PMIの実施」を両輪と捉え、中小PMIの取組の類型について整理したものです。

中小PMIガイドラインのポイントとして、中小PMIに関する初のガイドラインであること、各PMIの取組施策について、時系列で整理されていること、PMIの取組施策を基礎編と発展編に整理していること、具体的な統合施策については、3つの統合領域で整理されていること、各施策の成功事例・失敗事例が多く掲載されていることの5つが挙げられます。

また、PMIガイドラインは総論と各論から構成されており、総論では、PMIの概要と進め方の全体像が示されています。「M&Aの完了」に留まらず、「M&Aの成功」を実現するためには、適切なPMIの実施が不可欠です。また、PMIは、大きくはこちらの4つのプロセスで整理することができます。


特に、PMIをM&Aの早い段階から意識することが、M&A効果・シナジー効果の実現に重要です。

各論では、基礎編・発展編に分けて、具体的なPMIの取組施策が記載されています。基礎編では、経営統合・信頼関係構築・業務統合の3つの観点から、PMIの取組施策が整理されています。特に、信頼関係構築に多くのページが割かれている点、特徴があります。また、発展編では、主にシナジー効果の発現を目指す具体的な施策が記載されています。

このように、中小PMIガイドラインには、買収側の観点から、事業承継に役立つ情報が含まれています。今を知り、これからを考えることで、企業が新しい価値を生み出し、未来の経営につなげることができます。ぜひ、明日からの経営にお役立てください!

文=オンデック情報局