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M&Aガイド

【M&A即効解決FAQ】景気動向が不透明でもM&Aは上手くいくものなの?

【M&A即効解決FAQ】景気動向が不透明でもM&Aは上手くいくものなの?

この【M&A即効解決FAQ】では、中小企業のM&Aに関して過去弊社に寄せられたご相談やよくあるご質問に回答する形で解説していきます。
これを機に、皆様の会社の成長のツールとして、また場合によっては皆様の会社の事業承継の一つの選択肢として、M&Aをより身近に感じていただけると幸いです。

今回は、弊社が支援した案件において、景気が不透明な中でも成功したといえる中小企業のM&Aの成約事例を紹介します。

【Q1】景気動向の不透明感が増していますが、このような状況下でも、M&Aは上手く実行できるのでしょうか?

新型コロナウイルスの影響が表れ始めた2020年4月以降も、弊社が支援したM&A成約数や、事業承継のご相談の数は堅調に推移しています。
ただ、新型コロナウイルスの影響下における成約事例については、M&A実行から間もないこともあるため具体的な紹介は控えさせていただきます。

一方で、現在の新型コロナウイルスの影響に伴う国内企業の業績悪化のペースは2008年のリーマンショックに近いものがあります。そうした状況下で行われたM&Aでも、成功したといえる案件は多数あります。

今回は、リーマンショック後の不況下におけるM&Aの成功事例、それも単に成約しただけではなくM&A後の業績が急伸した案件をご紹介します。事業の譲渡や買収を検討されているものの、景気の不透明さから決断に迷われている方の参考になれば幸いです。

1. 案件の概要

  譲渡企業 買収企業
業種 電子工業用装置開発・販売 機器装置開発・販売
規模 従業員数:15名
年間売上高:2.4億円
経常利益:収支均衡であったが、足元は赤字に転落
従業員数:150名
年間売上高:40億円
M&A検討の動機 後継者不在、経営基盤強化 内製技術の強化
補足事項 ・創業30年の企業
・社員の技術レベルが高い
・リーマンショックに伴い、足元の業績は急激に悪化
・新興上場企業
・更なる飛躍のため、内製技術レベルの向上を目指す
譲渡スキーム 譲渡企業の発行済株式の100%譲渡

2. 成約に至るまでの経緯

・当初、順調に交渉はスタートするも、交渉途中に発生したリーマンショックに伴い、譲渡企業の足元の業績は急降下
・しかし買収企業はそれを交渉に用いず、譲渡側の希望金額のままでオファー
・買収企業は、M&Aにあたって技術評価に力点を置いて検討
・買収監査(デューデリジェンス)を通じて、買収企業は、譲渡企業の高い技術力を持つ人材と、その技術の活用の方向性を十分にイメージ
・従業員への告知に十分配慮し、入念な準備のうえM&A実行

3. M&A成約後の事業の状況

・譲渡企業の社員らは、買収企業が持つマーケティング機能等を活用し、自社が持つ高い技術をより有望な分野に集中的に投下
・買収企業は、開発業務の内製化率を大幅に上昇させ、利益率と生産性を向上
・譲渡企業の売上は、M&Aから1年程度の間に急上昇。買収企業も早期の投資回収を実現

4. オンデックが考える本案件の成功要因

譲渡企業の成功要因

① M&Aに早期に着手した点
② 一貫して「社員」と「会社の発展」を軸に据えた交渉姿勢であった点
③ 自社の強みと弱みが非常に明確であった点
④ リーマンショックの影響で業績は急降下するも、日頃から堅実経営に努めていたため負債が軽かった点
⑤ オーナーがM&A後の経営方針に執着せず、買収企業の方針に体を預け切った点

買収企業の成功要因

① 一貫して技術評価に力点を置いた検討姿勢であった点
② 財務調査に偏重することなく、バランスの良い買収監査を実施した点
③ M&A実行後の事業展開を明確に描きながら検討を進めた点
④ 足元の業績悪化を交渉材料にせず、信頼を獲得した点(減額交渉よりM&A後の事業成長を優先)
⑤ 技術力の源泉である従業員への告知に、多大な配慮・準備・労力を費やした点(その結果、譲渡企業の従業員らのモチベーションは大いに向上)

この事例のように、リーマンショック後のような不況下であってもM&Aを成功させる確率を高めることは十分に可能といえます。また、こうしたケースを鑑みると、単に「景気が不透明だからM&Aが成功する・失敗する」とは一概に言えないということも、おわかりいただけるかと思います。

M&Aの本質は、「売った」「買った」ということではなく、また単に事業を「遺す」ことでもありません。重要なのは「発展的に活かす」ことです。弊社としては、譲渡側・買収側を問わず、双方の将来のために「事業の承継と発展」を同時に実現できるM&Aを、主体的・積極的に活用していただきたいと考えています。

弊社では、M&Aの具体的なご相談だけでなく、自社の企業価値の試算や、買収についてのご相談もお受けしています。私どもで何かお役に立てることがありましたら遠慮なくお気軽にお問い合わせください。

文=中井裕介(弊社コンサルタント)

※本記事は「経営情報誌 合理化 2020年秋号」(発行:一般社団法人 大阪府経営合理化協会)への弊社コンサルタント寄稿記事を再編集したものです。記載されている情報は掲載当時のものです