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M&Aガイド

【M&A即効解決FAQ】譲渡検討企業がM&Aを成功させるために気を付けるべきポイントは?

M&A即効解決FAQ_譲渡のポイント

この【M&A即効解決FAQ】では、中小企業のM&Aに関して過去弊社に寄せられたご相談やよくあるご質問に回答する形で解説していきます。
これを機に、皆様の会社の成長のツールとして、また場合によっては皆様の会社の事業承継の一つの選択肢として、M&Aをより身近に感じていただけると幸いです。

今回は、弊社の知見から「譲渡を検討している企業がM&Aを成功させるためのポイント」を解説します。中小企業におけるM&Aの特徴を踏まえつつ、その成功のために特に重要と思われる点が3つありますので参考にしてください。

【Q1】創業した会社の譲渡を検討しています。M&Aの成功に向けて注意すべき点はありますか?

私の経験から申し上げると、「秘密保持を徹底すること」「希望条件の優先順位を明確にすること」「検討開始後も経営姿勢を維持すること」の3点が特に重要だと感じています。いずれもM&A成功に向けた必要条件となります。

1.秘密保持を徹底すること

中小企業のM&Aにおいては、「M&Aを検討している」という事実そのものを厳に秘密にした上で進めることが非常に重要です。

なぜなら、M&Aの認知が近年急速に進んだとはいえ、中小企業の間ではまだまだM&Aに対しての理解が浅く、従業員や取引先の中にもネガティブな印象を持つ方々が一定程度いらっしゃるのが実情だからです。

前向きな経営判断、たとえば事業承継を目的としたM&Aの検討であっても、仮にネガティブな印象を持っている従業員がそれを知ってしまうと、「自社は倒産の危機にあるのでは?」「自社が外部の会社に乗っ取られるのでは?」といった尾ヒレが付いた噂や誤解が広まりかねません。そうなると、従業員の働く意欲が低下し、事業そのものに悪影響が出る恐れもあります。こういったことは取引先の関係者などについても同様に起こりえます。

ですので、M&Aの成功にあたっては、従業員や取引先には知られないように十分に留意しながら進め、しかるべきタイミングで適切な告知を行うことが重要です。

2.希望条件の優先順位を明確にすること

譲渡を希望される経営者に「M&Aにあたって重要視する条件は何ですか?」と質問すると、多くの場合、「①譲渡価格」「②従業員の継続雇用」「③取引先との取引継続」という回答が返ってきます。

こうした回答をいただいた際、弊社では「では①から③のどの条件を最優先にしますか?」という質問をしています。これは、必ずしもM&Aを進めていく中で全ての条件を受け入れてくれるパーフェクトな相手をご紹介できるとは限らないからです。最優先となる条件を決めておくことで、条件の一部について交渉相手から譲歩を求められるケースでも、合理的な判断や検討が可能になります。

加えて、最優先する条件が何であるかによって買収企業の探索方法も変わってきます。たとえば「①譲渡価格」を最優先される意向であれば、新規参入企業への譲渡のほうが価格面の評価が高くなる傾向があるため、よりそうした買収候補を探すよう注力することがあります。

一方で「②従業員の継続雇用」を最優先されたい場合には、同業者への譲渡を避けるように配慮することもあります。同業者とのM&Aを進めた場合に、従業員同士の能力・役割が重なってしまうことで、M&A後に譲渡企業側の従業員の継続雇用において不利な状況が発生するケースを避けるためです。

こうした観点から、希望条件の優先順位を明確にすることは非常に重要となってきます。

3.検討開始後も経営姿勢を維持すること

創業当初から「会社を売却する(イグジット)」という出口戦略を持っていた経営者ならば問題はありませんが、そうでない場合には「M&Aに着手する」という判断を下すこと自体、経営者に相当な精神的エネルギーを強いるものです。弊社にご相談いただく経営者の方からも「後継者候補を数年にわたり模索したが進展せず、迷いに迷った挙句、M&Aを検討することにした」というお話を多数お聞きします。

さらに、M&Aの検討を開始してお相手探しを始めたとしても、必ずしも良縁に恵まれるとは限りませんし、またM&A成立までの期間に1~2年を要することも珍しくなく、M&Aの成立までには長い時間を要します。しかしながら、M&A専門家や仲介業者に正式に依頼する、すなわち「M&Aの検討に着手する」という大きな決断をした時点で、既にM&Aが成立したような錯覚に陥ってしまい、無意識のうちに経営に対する姿勢が緩み、業績を悪化させてしまうといったことが少なからず見受けられます。

こうした緩みから足下の業績が悪化してしまうと、買収側はそれを懸念材料のひとつと判断してしまいますので、条件交渉に不利に働くことはもちろん、将来的に良縁に恵まれる可能性そのものも低下してしまいます。ですので、M&Aの検討に着手した後は、むしろ従来以上に真摯に経営にあたり、業績を維持・向上させる努力が重要になります。

以上、譲渡企業が注意すべきM&Aの成功に向けた重要ポイント3点を解説しました。
弊社では、こうした知見や経験をもとに、中小企業のM&Aを成功に導くサポートをさせていただいております。私どもで何かお役に立てることがありましたら遠慮なくお気軽にお問い合わせください。

文=中井裕介(弊社コンサルタント)

※本記事は「経営情報誌 合理化 2019年秋号」(発行:一般社団法人 大阪府経営合理化協会)への弊社コンサルタント寄稿記事を再編集したものです。記載されている情報は掲載当時のものです