譲渡側の概要
A社は工業用接着剤を製造する創業約50年の企業。工業用接着剤の業界においては歴史のある企業であり、業界では一定のポジションを確立していた。また、100社を超える取引先を有しており、安定した顧客基盤を築いていた。
譲渡側の課題
A社の業績は安定していたものの、人材の確保・定着に課題を抱えており、積極的な営業活動の拡大ができずにいた。また、少数運営に起因する業務の属人化や、原料備蓄設備の老朽化に伴う修繕費などから、利益率も悪化傾向にあった。A社のX社長は、こうした課題に加え、環境問題に起因する有機溶剤の使用規制の強化や海外製品のシェア拡大なども重なり、漠然とした将来不安を抱えていた。自身で後継者を探したものの適任人材も見つからず、廃業も含めて検討していた。
オンデックとの出会い
X社長は、廃業について顧問税理士にアドバイスを求めたところ「M&Aでの第三者への事業の譲渡」を提案され、公的機関である事業引継ぎ支援センターへ相談することにした。事業引継ぎ支援センターを通じて紹介されたM&A支援会社3社と面談を行った末、X社長の相談に最も真摯に対応したオンデックへ依頼することを決断した。
買収側の概要
複数の譲受候補先の中から独占交渉へと進んだのは、接着剤及び原料の卸売販売を行うB社だった。B社は、介護分野における衛生材向け接着剤や、老朽施設の補強や補修など建築分野における接着剤の受注が近年増加しており、業績も上昇傾向にあった。さらなる事業拡大に向けた製造分野への進出のため、スピード感のある事業展開を目指し、製造ノウハウや仕入・販売のネットワークを既に持つ企業のM&Aを企図していた。
課題解決・シナジー
A社は、B社の傘下となることで、課題であった営業力が強化されるとともに、製造人員の獲得・業務の標準化が進められ、売上の増加が見込めるようになった。また老朽化した原料備蓄設備への投資も実現した。
一方のB社も、A社の製造技術を獲得することで、これまで応えられなかった顧客のニーズに対応できる製品の製造・提案が可能となり、既存顧客からの売上が増加。また原料等の仕入ルートを併合することで低コストでの製品化が実現し、利益率の高い自社製品の展開が可能となった。
本件では、X社長が顧問税理士を通じてM&Aを知ったことで、最終的にA社・B社双方の発展が実現できましたが、経営者が、業容維持・事業拡大に限界を感じ、さらに後継者も見当たらなかった場合、「廃業」を考えてしまうのは当然の流れかもしれません。しかし廃業を選択した場合、代表者が保証人となっている借入が残ると代表者個人がこれを負担することになります。また、雇用は失われ取引先との関係も喪失します。この点、M&Aで第三者へ事業を譲渡した場合、創業者利得を獲得できるだけでなく、代表者個人の保証債務や担保提供は譲受企業により解除されることが一般的です。また、雇用は継続、取引先との関係も継続もされます。
後継者問題を抱えている場合には、まずは一度、公的機関や、オンデックをはじめとするM&A支援会社にご相談ください。