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M&Aガイド

経営課題を解決する戦略的M&A「戦略的企業買収のプロセスとポイント」

戦略的企業買収のプロセスとポイント

「経営課題を解決する戦略的M&A」では、自社の飛躍的な成長の実現に向け、M&A(企業買収)を戦略的に活用するために必要な知識をガイドします。
そして本記事では、買収企業から戦略的にM&Aを仕掛ける場合のプロセス、および買収を成功に導くためのポイントについて解説します。
 

買収企業起点の戦略的M&Aプロセス

ここでは、買収企業から戦略的に仕掛けるM&Aについて、オンデックが提供する「買収提案サービス」をベースに、そのプロセスを解説します。

買収企業から仕掛けるM&Aでは、買収企業から、対象企業に対してM&A後のメリットを提示した上でM&Aを進めます。買収提案型M&Aの最大の利点は、買収企業の経営戦略にマッチする企業を任意に選べるため、シナジー効果を含めた戦略の実現性が高いことです。
また、他の買収企業との競合をかなりの割合で排除できるため、顕在化した譲渡案件にオファーする場合と比べ、自社のペースで柔軟に取引を進行させることができます。

戦略策定フェーズ

1.事業の成長戦略・M&Aの目的を設定する
まず、自社の成長戦略に基づき、M&Aの目的を明確にする必要があります。
自社の状況や強み・弱み、マーケットや競合、顧客のニーズなどを分析し、自社の成長のために取り組まなくてはならない課題を明確化します。
そしてシェア・販路の拡大や、開発力の強化、サプライチェーン強化、事業の多角化など、M&Aの目的を設定します。M&Aにあたっては、この目的を達成するために対象企業を探索していくことになります。

2.対象企業を選定する

・買収対象企業の要件の明確化
成長戦略に合致する買収対象企業についての要件を明確にします。オンデックが支援する場合、そのサポートのもと業種や規模、欲しい技術やサービスなど、対象企業を抽出する条件を決めていくことになります。


・買収対象企業の整理
買収の対象として想定される企業を業種、売上規模、地域、従業員数、代表者年齢、事業内容などの属性で整理します。オンデックでは、企業名は匿名とした上で、対象となりうる企業数や、その属性別の分布状況を可視化し、整理して提示します。
オンデックの買収提案サービスでは、この段階までは初期的な相談の範疇として無料で対応しています。


・買収対象企業をリスト化
買収対象企業をリストアップし、実際にアプローチする企業を選定します。
オンデックの買収提案サービスでは、正式に依頼を受けたのち、実際の社名を記載した対象企業リストをご用意し、選定作業を支援します。


・提案方針の決定と買収提案資料の作成
買収対象企業に対し、広く網羅的に業種レベルでアプローチしていくのか、企業数を絞ってアプローチしていくのかなどを決定します。その方針に合わせ買収対象企業に向けた提案書を作成します。提案書では、対象企業が買収企業と一体となることで、どのようなメリットがあり、どのような成長が実現できるのかをアピールします。
オンデックでは、このアプローチ方針に応じた2種類の買収提案資料のパターンを用意しています。一方は広く網羅的にアプローチすることを想定したライトな内容の提案書を作成するパターン(レター型)です。もう一方は一定の企業に絞って、M&A後の事業方針やシナジー効果、両社にとってのメリットなども記載した、詳細な内容の提案書を作成するパターン(提案書型)です。

アプローチフェーズ

3.対象企業にアプローチする
提案書の用意ができたら、具体的に対象企業にアプローチを開始します。オンデックが支援する場合、アプローチ方法は主に以下の二つとなります。

・レター型=ダイレクトメールと架電によるアプローチ
買収企業名を匿名としつつ、オンデックから、提案書もしくはレターを送付の上、電話でフォローコールを実施します。


・提案書型=提携機関を経由するアプローチ
買収企業名を匿名としつつ、オンデックが提携している銀行や証券会社といった金融機関などを経由し、金融機関から直接、対象企業の経営者に提案書を持ち込みます。金融機関の担当者を通じて確実に対象企業の経営者に提案書が届けられるため、DMや郵送などで提案書を送付するよりも反応率が高くなります。

レター型、提案書型いずれにおいても、企業へのアプローチの進捗状況について、オンデックでは定期的に報告書を提出します。

4.対象企業の意向を確認する
提案書に関心を示す対象企業が現れたら、まずオンデックが面談を実施します。改めて提案内容を説明した上で、対象企業のM&Aへの関心度や検討の可否などを確認します。

交渉フェーズ

5.社名を開示し対象企業と交渉する
買収提案に関心を示した企業とオンデック間での秘密保持契約を締結した上で、買収企業の社名を開示します。その後、M&Aについての交渉を開始します。
経営統合後、買収企業が想定しているシナジー効果が得られるのか、今後の事業展開におけるメリットやリスク、そして譲渡価格についてなど、対象企業の経営者が気になっている点について初期的なディスカッションと調整を進めます。

・トップ面談の実施
両社がさらに継続して意欲を持った場合には、トップ同士の面談や現地視察を行います。調整はオンデックが間に立って行います。
M&Aを成立させるためには相互理解・信頼関係の構築が必要です。この面談ではトップ同士で事業戦略や社風・企業文化や経営方針を含めた考え方について直接話し合い、お互いの疑問点やM&Aに求めるものを明確にします。


・対象企業の詳細分析
対象企業の決算書や管理会計資料、製品・サービスの詳細説明、労務管理に関する資料などをファイリングしたデータ(インフォメーション・パッケージ)が、オンデックを介し買収企業に共有されます。
入手したそれらの内部情報を精査し、また対象企業へ質疑応答を行うことで、当初の事業戦略、成長戦略に沿うものかどうかを分析し、さらに交渉を継続するかどうか判断します。

6.M&Aに関する基本合意契約を締結する
M&Aの推進に向け、双方の希望が一致した場合、基本合意契約を締結します。
基本合意契約とは、買収する側と譲渡する側の双方が、概算での譲渡価格やスキーム、実行へのスケジュール、独占交渉権など、M&Aの基本的な条件に合意し交渉を進めていくことを確認する契約です。その後のM&Aの交渉をスムーズに進めるために締結します。

7.対象企業のデューデリジェンス(DD≒買収監査)を行う
基本合意契約を締結した後は、対象企業の価値を明確にするための調査、デューデリジェンス(DD)を行います。
買収企業が主体となり、対象企業の資産や負債の状況、簿外債務や債務保証、法的トラブルや訴訟リスクの有無、市場環境や将来性などといった、経営実態や経営環境の調査・確認を行います。DDは専門性が要求されるため、弁護士や公認会計士など外部の専門家に依頼することが一般的です。

8.M&Aの実行に向け最終的な条件調整を行う
DDの結果を踏まえた上で対象企業に最終的な買収条件を提示し、交渉します。
買収価格や買収時期などの合意に加えて、対象企業が保有する技術やノウハウの引継ぎ方法、買収後にトラブルが発生した場合の対処方針の確認なども行います。

9.最終契約を締結し、M&Aを実行する
条件に対して双方の合意が得られた場合、正式なM&A(企業買収)に関する最終契約を締結し、M&Aを実行します。そして関連する諸手続きを完了させ、取引のクロージングとなります。

戦略的M&Aを成功に導くためのポイント

買収企業から戦略的に仕掛けるM&Aを成功に導くためには、以下のようなポイントを押さえておくことが大切です。

自社の成長戦略に合致した企業を選定する

M&Aを行う目的は、事業成長を図るために他社の経営資源を獲得することです。成長戦略を構築した上で、戦略の実行に必要な経営資源が何なのかを明確にしましょう。
自社が保有する経営資源を把握した上で、M&Aで獲得するべき経営資源を特定し、その資源を確実に有している企業を買収対象として選定することが重要です。

対象企業の経営者と信頼関係を構築する

中小規模のM&Aでは、経営者同士が交渉を実施することがほとんどです。そのため、双方が納得いくまで話し合い、信頼関係を構築することが重要です。信頼関係を構築することで、双方にとって前向きな交渉を行うことができるでしょう。
さらに中小M&Aでは、買収後も対象企業が存続することも、一定期間、対象企業の経営者が経営に関与し続けることも一般的です。経営者同士の信頼関係は、買収後の企業経営においても重要になってきます。

デューデリジェンスを丁寧に行う

M&Aを実行した後に、対象企業に簿外債務や債務保証、訴訟リスクのあることなどが判明すると、買収企業の経営に打撃を与えてしまいます。
このようなことが起きないように、DDを丁寧に行い買収後のリスクを低減すること、リスクに対する対処方針を固めておくことが重要です。

対象企業の従業員に対して丁寧な説明を行う

M&Aによる大きなリスクの一つに、買収後、対象企業の優秀な人材が離職し、高度な技術やノウハウが失われてしまうことが挙げられます。大きな原因のひとつは、経営者が変わることに対して対象企業の従業員が不安を感じてしまうことにあります。
人材流出を防止するためには、従業員の不安を払拭しなければなりません。そのため、M&Aの最終契約の締結後、適切なタイミングで従業員に対して説明を行う必要があります。買収後の経営方針や従業員に対する処遇などについて丁寧に説明しましょう。

戦略的にM&Aを活用し、譲渡案件の顕在化を待つことなく能動的にアプローチすることで、より早く柔軟に、自らの意思に基づいて事業の成長を図ることが可能です。事業成長の手段の一つとして、ぜひ、積極的にM&Aをご検討ください。

監修=田邊泰博(公認会計士・中小企業診断士|株式会社わかば経営会計