成約インタビュー INTERVIEW
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買収企業インタビュー
卸売業

買収企業が自らオファー! 「鉄の信頼」が結んだ卸売業のM&A

譲渡企業
買収企業
業種
卸売業
卸売業
M&Aの目的
後継者問題の解決
経営基盤の強化
事業エリアの拡大

  成長戦略型M&Aは事業を拡大する上でスピーディかつ効果的な手段となりえます。鋼材の卸売業を営む富士鋼材株式会社と株式会社アイキ鐵鋼販売のM&Aは、両社の成長に繋がった好例でした。買収をした富士鋼材は事業エリアを拡大。譲渡をしたアイキ鐵鋼販売も、クロージングしてからわずか5ヵ月で営業力が強化されたのです。


そこで富士鋼材の代表者である富家次朗氏と、アイキ鐵鋼販売の代表者である中村智美氏にインタビュー。M&Aの経緯とポイントについて話を聞きました。

左から富士鋼材の富家次朗氏とアイキ鐵鋼販売の中村智美氏

信頼できるパートナーとのM&Aは大きなチャンス!

買収企業である富士鋼材は西日本を中心に鋼板や形鋼、土木建材など多様な鋼材を販売。特に、主力商品の鉄筋丸棒は西日本でトップレベルのシェアを誇ります。加えて、倉庫を西日本の各地に設け、きめ細かいデリバリーで取引先からも信頼されています。ただ、富家氏は「さらなる成長を遂げるためには課題がある」と感じていました。

「人口の減少を考えると、同じエリアで勝負しているだけでは将来的な成長は見込めない。香川県に本社がある富士鋼材は西日本を中心に営業していますが、事業エリアを拡大していくのは経営戦略の大前提でした。特に一大マーケットである関東への進出は以前からの夢でしたが、関東圏には拠点がなく、関東の建設会社とも繋がりがない。関東進出の足がかりを得られずにいました」(富家氏)

そんな中、突然、転機が訪れます。富士鋼材は、東京の鉄筋メーカーに勤めていた知人のM氏を執行役員に迎え入れたのです。

「Mさんは鉄筋メーカーだけでなく関東圏の鋼材の販売会社にも顔が効くので、関東進出のきっかけを掴んでほしいとお願いしました。彼はメーカー勤務時代のツテを辿り情報収集に徹してくれた。そうして出会ったのが、東京に拠点を構えるアイキ鐵鋼販売さんでした。弊社と同じく主に鉄筋丸棒を取り扱い、Mさんから話を聞く限りでは会社の雰囲気も似ている。関東で事業を展開する上でのパートナーとなって欲しい!と思いました」(富家氏)

さっそく富家氏は、M氏を通じてアイキ鐵鋼販売に資本提携を含めた協業を提案します。アイキ鐵鋼販売は大手の建設会社から安定した受注があり、鋼材メーカーとの関係も良好。事業は堅調でした。

アイキ鐵鋼販売の代表である中村智美氏は、M&Aについては「後継者問題を抱えてはいたが、考えたこともなかった」と言います。「自分の会社がM&Aの対象になるとは思いもしなかった」そうですが、M氏の三度にわたる熱いアプローチを受けて富士鋼材とのM&Aを決意します。

「メーカー勤務時代に苦楽をともにしたMさんからの提案だったので、前向きに考えられました。富士鋼材とM&Aをすれば後継者問題が解決でき、販路や人材の共有によって経営基盤も強化できる。そして決め手となったのは、富家さんの人柄。一緒に頑張っていきたいと、我々の立場に寄り添って話してくれた。言動に信頼感があったので、迷わずM&Aを決断できました」(中村氏)

10年20年先も会社を存続させ、社員がイキイキと働ける環境を築くには「M&Aは有効だ」と感じた中村氏。富士鋼材はパートナーとしてベストであり、「アイキ鐵鋼販売にとっても成長のチャンスだ」と思ったそうです。

「後継者が不在だったので、将来的な問題を事前に解決できて良かったです」と笑う中村氏

両社に向き合った仲介でM&A後の信頼を構築

アイキ鐵鋼販売とM&Aをすることになった富士鋼材ですが、細かい条件調整や手続きなどのM&Aの実務はまったくの未経験。富士鋼材のメインバンクに依頼するも「中立での対応は難しい」と断られた富家氏は、お世話になっている会計士に相談しました。そこで「専門のM&A支援会社に依頼した方が良い」とオンデックを紹介されたそうです。

「報酬がリーズナブルなところにオンデックさんの魅力を感じました。アイキ鐵鋼販売がある東京に支社があることも重要でした。また、初回の面談にオンデックさんの副社長がわざわざ顔を出してくださり、親身に対応してくれそうだと感じたのもポイントです」(富家氏)

富家氏はオンデックに仲介を依頼することにしましたが、当時は新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言の発令下。さらにアイキ鐵鋼販売は中村氏しか取締役がいなかったため、なかなかスムーズに事が進みませんでした。

「アイキ鐵鋼販売にとってもM&Aは初めてですし、専任で推進できる人材はいませんでした。社長である私が対応しようにも通常業務があるため、なかなか時間が割けない。そのため、M&Aを合意してから1年3ヵ月もかかってしまいました。辛抱強く待ってくれた富士鋼材さんはもちろん、私どもの歩調に合わせて調整を進めてくれたオンデックさんにも感謝しています」(中村氏)

M&Aを決断してから成約までは一般的に9ヶ月はかかります。それと比較しても長期間の譲渡手続きとなりましたが富家氏は「これで良かった」と言います。

「進みが遅いとは思いましたが、それはオンデックさんが2社の状況に合わせて仲介してくれたから。機械的に作業を進めるのではなく、両社の気持ちを踏まえて対応してくれました。譲渡側の方が圧倒的な覚悟がいりますし、急かしていたら信頼にヒビが入ったかもしれない。じっくり進めてもらえて正解でした」(富家氏)

相手の気持ちを汲むことを大切にした富家氏。あくまでもパートナーとしてアイキ鐵鋼販売を尊重したことが、M&A後の好スタートに繋がったに違いありません。

「オンデックさんが柔軟に対応してくれて助かりました」と語る富家氏

同じ理想を目指す仲間ができたのがM&A最大のメリット

クロージングから5ヵ月が経った現在、富家氏と中村氏は「M&Aをして良かった」と口を揃えます。アイキ鐵鋼販売は体制を変えることなく、これまで通り営業。富士鋼材は営業所を東京に設けて、念願だった関東進出を実現しました。

「富士鋼材は関東では“新参者”ですが、アイキ鐵鋼販売さんと協働していることが営業面での追い風となっています。お客様にも仕入れ先であるメーカーにも、暖かく迎えいれていただいています。全国規模のメーカーには富士鋼材単体より一緒に交渉したほうが反応が良いし、スケールメリットも出せます。鋼材は市場に左右される商材なので、互いに相場感を共有できるのも営業する上で利点となっています」(富家氏)

当然、アイキ鐵鋼販売もシナジー効果の恩恵を得ています。富士鋼材との関係性から、関西に本社を置く建築会社に営業しやすくなりました。また、M氏がアイキ鐵鋼販売に常務として出向することで、中村氏に集中していた経営面での負荷が軽減。中村氏は空いた時間を新規顧客の開拓や、メーカーとのリレーション再構築にあてるなど、ポジティブな効果が出ているそうです。

「富士鋼材さんが仕入れてアイキ鐵鋼販売が営業をする。逆にアイキ鐵鋼販売が仕入れて富士鋼材さんが営業をする。などなど、お互いの仕入れ力や販売力を共有することができています。互いの長所を活かしながら、数字を伸ばせる兆しが早くも出てきています。加えて、社員の交流や人材育成プロジェクトをともに進めることで、組織的なシナジーも生まれるかもしれない。やればやった分だけ手応えがあるので、仕事のやりがいが増しました」(中村氏)

仕入れ先のメーカーからも「面白いことしたね」「良い決断をしたね」と評判が良いという両社のM&A。三方よしとなった要因について、中村氏は「譲渡した相手が良かったのが一番のポイントだった」と語り、富家氏は「パートナーと同じ目線になれたことが大きい」と教えてくれました。

「富士鋼材では『鉄の信頼』という言葉を掲げています。お客様に売っているのは鋼材でなく鉄のように固い信頼であるというのが企業理念なんです。中村さんは、その考えに賛同してくれている。そうなれば当然やるべきことが揃ってきます。細かいやり方は違っても、お客様と仕入れ先に、両社が一緒になってくれて良かったと思われるよう行動すれば、両社ともに発展していけるはずです」(富家氏)

成約インタビューvol.2

「互いの名刺に『鉄の信頼』と記載しているのも、理想を共有できた表れだと思う」と富家氏

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オンデックからのコメント

M&Aの条件調整と締結のみをお手伝いした本案件は、オンデックにとっては珍しい事例です。買収企業がベストなパートナーとして譲渡企業を既に選んでおり、M&A後のシナジー効果も当初から見込まれていました。

ただ、早々にシナジー効果を発揮できたのは、両社の相性が良かっただけでなく、クロージングまでのプロセスが良かったから。富家氏の譲渡企業を尊重する対応がM&Aを成功に導いたと思われます。

オンデックでは買収企業と譲渡企業のそれぞれに寄り添った仲介を心掛けています。本案件のように条件調整や締結だけでも柔軟に対応できますので、お気軽にご相談ください。

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