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M&Aガイド

【M&Aにおけるファンド活用】再生ファンドとは?

経営者が会社をさらに成長・発展させたいと考えたとき、M&Aは有効な手段の一つとなります。その中でも、特にファンドへの譲渡という方法をポジティブに、また戦略的に活用してみてはいかがでしょうか?
「M&Aにおけるファンド活用」シリーズでは、会社の譲渡において、ファンドをどのように活用すべきかなどについて解説します。

今回は、PEファンドの一種である再生ファンドについて、その目的、対象となる企業、支援内容について概要を解説します。M&Aを検討する際の参考にしてください。

※特にことわりのない限り、ファンド=PEファンドとして解説しています
 

再生ファンドとは?

再生ファンドとは、経営不振に陥った企業などに対し、その再生支援を行うPEファンドの一種です。当然リスクの高い投資となりますが、株式の保有割合はケースバイケースです。

再生ファンドの投資目的

再生ファンドは、事業不振、債務超過などで経営不振に陥った企業を主な対象とします。再生可能な事業を整理、切り出して立て直しを行い、最終的に株式の売却(イグジット)や株式の公開(IPO)を行って収益を得ることを目的としています。大規模なリストラや事業整理の有り様から“ハゲタカ”などと揶揄されることもあり、実際に事業再生のために厳しい手法をとる場合もあります。

再生ファンドの投資対象

経営不振に陥っているものの、大胆な人員削減、コストカット、事業のリストラクチャリングなどを実施すれば、事業の継続(再生)が可能な企業(事業)が再生ファンドの投資対象となりえます。
具体的には次のような企業です。

  • 本来は高い収益性、優れた技術、ノウハウを持った企業
  • 不採算事業を抱えているが、一方で好採算事業も営んでいる企業
  • 事業構造よりも財務に問題を抱えていることによって成長が停滞している企業

例えば、競争力のある製品(サービス)を持っているものの、過去に本業以外への投資で多額の借入を行った結果、過剰債務を抱えている中小企業などが対象です。そのような状況にあり、自力での債務弁済を図っていくことが難しい場合、再生ファンドの力を借りて再生を図ることになります。

投資基準は、短期間での再生と、再生後の高い企業価値評価の獲得が可能な企業となります。そのため、大規模な事業の整理に耐えうる一定程度の企業規模がより好ましいといえますが、上述した条件を満たす企業であれば、中小企業であっても再生ファンドの活用の可能性があります。最終的な判断は専門的な知見を持ったアドバイザーによる詳細な評価と協力を通じて行うとよいでしょう。

再生ファンドの支援内容

再生ファンドは、経営不振に陥った企業に投資し、再生させることで、最終的な収益を確保します。その目的を達成するために次のような支援を行います。

  • 債権の買い取り、出資などで事業投資資金を提供する
  • 不採算事業を切り離し、事業の整理、経営方法の見直しなどにより再生を支援する
  • 企業再生の専門家(ターンアラウンドマネージャーなど)を派遣する
  • 人員削減、リストラなどにより適切にコスト削減を図り収益性を改善する

再生ファンドの支援を受ける場合、大胆なリストラ、事業整理が行われ、収益性の高い事業、改善の見込める事業が残されるのが一般的です。
一方で、価値ある技術やサービス、専門的な技術を持つ社員などは引き続き業務を継続することが可能です。経営不振に陥ってしまった場合には、再生ファンドの活用により、立て直しへの道筋が開けるかもしれません。

文=木下忠夫(経営コンサルタント|株式会社クリエイティブ代表取締役)
監修=山本悠貴(公認会計士|株式会社わかば経営会計