成約インタビュー INTERVIEW
買収企業インタビュー
製造業

金属加工業のM&Aから約2年半、同業他社を買収した効果と発展

譲渡企業
買収企業
業種
製造業
製造業
M&Aの目的
後継者問題の解決、経営基盤の強化
事業拡大

事業の譲渡・買収を検討している経営者にとって、M&Aによって会社がどうなっていくのかは気になるところでしょう。そこで、過去にオンデックの仲介によって同業他社を買収した、金属加工業の株式会社田野製作所の田野英紀氏に、M&A成立後からの約2年半を振り返りながら、M&A後の事業の成長や、統合における苦労点などについてお聞きしました。

金属加工業のM&Aから約2年半、同業他社を買収した効果と発展

シナジーによって新たなニーズに応える新製品が誕生

ことの始まりは2018年の秋頃。田野製作所は事業拡大を目的に、金属加工を行う株式会社ダイエー精機をM&Aによって買収しました。しかし当時、経営者である田野氏は、事前にM&Aの計画があったわけではないといいます。
 
「当時、自分の中ではやりたいことはありましたが、どうしてもM&Aをしたい、というわけではなく。そんな時に買収の話をオンデックさんから提案いただいて、対象会社の事業内容が、私がやりたいと思っていた方向性と合致したのでM&Aに臨んだというのが実情です」(田野氏)
 
きっかけこそオンデックからの提案であったものの、田野氏はダイエー精機とのM&Aは、自社にとって大きなチャンスだと捉えていました。ダイエー精機が魅力的な顧客を持っていただけでなく、シナジー(相乗効果)によって、自社が新たなニーズにも対応できるようになる可能性を感じたからです。

では実際M&Aをしたことで、田野氏の狙いどおりに会社は成長できたのでしょうか? その答えはイエスでした。

田野製作所は超精密な金属加工を得意としており、一方でダイエー精機は大量生産を得意としていました。M&Aでダイエー精機とグループになることで、超精密部品と大量生産部品の両ニーズにより積極的に応えられるようになったのです。
それだけでなく、M&A後、1年以上かけて両社の強みを組み合わせた新たな生産体制を試行し、さらなるシナジー創出に挑戦します。
 
「田野製作所の強みは、精度の高い超精密切削技術でした。対してダイエー精機は、冷間鍛造という技術、また田野製作所にはないパーツフォーマーという量産に向いた設備を持っていました。ただ、工法の違いもあって、精度は田野製作所のほうが高かった。そこで両社の強みを組み合わせられないかと考えたんです」(田野氏)
 
量産向けの設備でより高い精度を出す。言葉にすると簡単ですが、実現するのは非常に大変なことでした。設備の改良を依頼しても、機械メーカーと金型メーカーの両方から「できない」と断られたそうです。しかし田野氏はあきらめずに食い下がり「失敗してもいいから」「うまく行かなくても金型代は支払うから」と繰り返し説得。トライ&エラーを繰り返し、ついに設備の改良に成功しました。
 
結果、新しい生産体制が整備され、事業拡大の糸口をつかむことができた田野氏ですが、売上以外にもM&Aで得られたものがあるといいます。
 
「田野製作所の課題のひとつに、現場環境の整備、具体的には5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)が徹底できていない部分がありました。一方で、ダイエー精機の5Sは素晴らしかった。それは社員の仕事に対する意識が優れている証。その取り組み方は、田野製作所にとって非常に大きな学びになっていますね」(田野氏)

金属加工業のM&Aから約2年半、同業他社を買収した効果と発展

M&Aは、譲受企業の“これまで”も引き継ぐ

さて、M&Aを実施した現在、経営状態は順風満帆な様子。一方で、M&A成立前は、ダイエー精機の従業員の反応が非常に気になっていたそう。
 
「買収とか社長交代と聞くと、どうしても従業員にネガティブに捉えられてしまったり、誤解が生まれたりすると思うんです。なので、M&Aを伝えた後に間髪入れず、ダイエー精機の従業員一人ひとりと面接しました。その結果、私の考えをきちんと伝えることができたし、落ち着いて受け止めてもらえたのではないでしょうか」(田野氏)
 
M&Aがスムーズに進んだのは、田野氏の丁寧なコミュニケーションが功を奏したからでしょう。当然、ダイエー精機の元社長とも関係は良好で、これからの会社の成長も引き続き見届けてもらいたいといいます。
 
「M&Aで会社を引き継ぐというのは、その会社の文化を重視すること。それは、会社の良い部分を引き継ぎ、悪い部分は改善していくことです。事業を拡張して利益を上げるだけでなく、それまで積み上げてきたものも引き継いでいかなければならない。それがM&Aで事業を譲り受けた経営者の大きな役目だと思いましたね」(田野氏)
 
M&A実施から約2年半が経った現在について「技術を組み合わせて仕事を進化させるという理想が叶えられている」と評価し、「これからさらに技術的により優れたものを作っていきたい」と今後の展望に目を輝かせます。最後に、事業拡大の際にはもう一度M&Aを選択するか? と尋ねると、「やりたいことを実現するためならまた検討したい」と満足げに答えてくれました。

COMMENT
オンデックからのコメント

M&Aによって譲り受けた企業の従業員に対して、田野氏が十分に配慮して誠実に行動したからこそ成功したともいえる本件。製造業同士のシナジーによる事業拡大はもちろん、企業文化の統合においても見事に成功した好例といえます。
 
M&Aによる事業成長やシナジー創出は、従業員や取引先との関係が良好であるからこそ成り立つもの。良好な関係性の構築のために配慮すべきポイント、中小企業のM&Aならではの留意点なども存在します。中小企業のM&Aの経験が豊富なオンデックにご相談いただければ、M&Aの成功に繋がるよう、丁寧にサポートします。