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M&Aガイド

【M&Aの手順と詳細】③ 提携仲介契約・アドバイザリー契約とは?

M&Aの手順と詳細_提携仲介契約・アドバイザリー契約

M&Aの支援を依頼する際には、専門家との間で提携仲介契約(仲介契約)またはアドバイザリー契約を締結することとなります。依頼を受けた専門家が担う役割は、M&Aの検討に必要な資料の作成、M&Aの相手方の探索や、M&A実行時までに取り決めるべき事項(M&Aの手法・スキーム、譲渡対価、社員や取引先にM&Aに関する告知を実施する時期と態様、譲り受け企業への業務引継の方法等)に関する助言等、多岐にわたります。

今回は、提携仲介契約とアドバイザリー契約のそれぞれの基本構造とメリット・デメリット、およびこれらの契約を締結する際の留意点について解説していきます。

提携仲介契約(仲介契約)

提携仲介契約(仲介契約)とは、同一の専門家が仲介者として、譲渡(譲り渡し)企業と買収(譲り受け)企業の双方に助言を行うことを予定している契約です。
仲介者が双方の状況を把握することができる構造であるため、交渉が円滑に進む場合が多い点がメリットです。
一方で、仲介者の恣意性により取引の公平性が歪められるおそれは否定できないため、一方の利益に偏った助言を行わない、中立・公平な立場を守ることのできる仲介者を選ぶ必要があります。

アドバイザリー契約

アドバイザリー契約では、譲渡企業と買収企業にそれぞれ別の専門家(フィナンシャルアドバイザー、FAと呼ばれます)がアドバイザーにつき、支援を行うこととなります。
双方の意見を交渉に反映させやすいメリットがある反面、意見の衝突が表面化する場面も多くなるというデメリットもあります。また、相手方の状況が見えにくいため、交渉が長期化する傾向があります。

中小企業M&Aにおける適切な契約形式

解説しました二つの契約形式のうち、当社は、中小企業M&Aにおいては、以下の理由から仲介形式(提携仲介契約)を推奨しています。
概して中小企業では、創業者一族や現社長らへの依存度が高い場合が多く、程度の差こそあれ、M&A実行後も創業者一族や現社長らからの業務引継ぎに関する協力が必要不可欠となります。スムーズにこれらの協力を得るためには、交渉段階を含めて双方の友好関係の維持・構築していくことが重要です。

友好関係の維持・構築の観点からすると、中小企業M&Aにおいては、譲渡側と譲受側がそれぞれのアドバイザーを通じてお互いの主張をぶつけ合い、しこりを残してしまうような交渉プロセスは望ましくありません。意見に相違がある部分については、仲介者が双方の意見をよく聞いたうえで、調整役としての機能を果たし、双方にとっての最適な着地点を提案することにより解決すべきです。

このように、仲介者がバッファーとしての機能を果たすことが、双方の友好関係促進の一助となり、ひいてはM&A実行後の事業の成功可能性を高めることにつながると考えています。

契約締結時の留意点

契約締結時には、契約内容について十分に確認することを心掛けましょう。特に、契約形式が提携仲介契約、アドバイザリー契約のどちらであるか、報酬の金額・支払条件や業務の範囲については、専門家から十分な説明を受ける必要があります。

文=中井崇博(弊社コンサルタント)