譲渡企業の概要
A社は法人向けの社宅斡旋サービスを中心に、不動産の賃貸仲介業と管理業を営んでいた。特に、業界大手のB社と数十年にわたる取引があり、社宅指定業者として信頼関係を構築。人事異動で転勤する社員の半数以上に社宅を斡旋し、安定した売上を確保していた。
一方で、A社は従業員が数名しかおらず、営業力の不足から新規顧客の開拓ができていないことが課題であった。営業力さえ強化できれば、蓄積された社宅斡旋のノウハウによって業績の向上は見込める状態であった。

譲渡企業の課題
B社への社宅斡旋サービスが売上の大半を占めていることがA社の課題であった。売上依存度は70%以上であり、事業を今後も継続するためには取引先の拡大は必要不可欠であった。しかし、A社で営業ができるのは経営者である70代のX社長のみで、今後も販路の拡大は見込めなかった。
さらに後継者の不在も懸念点であった。X社長には2人の息子がいたが、どちらも会社を継ぐ意思はなく、自社内での解決も難しい状況であった。そんな中、X社長はB社から「M&Aをしてみてはどうか?」との提案を受けた。X社長は、取引先はもちろん自社の従業員にも迷惑をかけるわけにはいかないと思い、会社の譲渡を決意した。
オンデックとの出会い
X社長は、主要取引先であるB社から大手M&A仲介会社を紹介された。しかし、仲介手数料や担当者の対応が意に沿わず、一年後に改めてB社からオンデックを紹介された。他のM&A仲介会社と比較して手数料がリーズナブルであったため、X社長はオンデックに仲介を依頼。主要取引先企業を考慮すると情報漏洩には細心の注意が必要なため、オンデックには秘密保持の徹底を期待した。
オンデックはX社長の意向を受け、情報開示のタイミングをずらすことを提案した。まず譲渡の匿名情報の提供先候補をリスト化し、情報開示先を数社のみに限定。本来はトップ面談の前に開示される決算書等のデータも、面談後とした。また、買収企業の経営者に対して「信頼できる人柄であること」も条件の一つとして、細心の注意を払いながらM&Aを遂行していった。情報提供する企業数を限定すれば、当然に買収候補探しの難易度は上がるが、そもそもA社の条件にマッチしている企業を入念に選定することで解決した。また、買収候補企業に開示できる情報量も限られる中で、A社の成長余地についてしっかり訴求したことも、マッチングが成功した要因のひとつであった。
買収企業の概要
A社を買収したC社は、家具製造販売業を営んでいた。職人の技術と機械工作を組み合わせ、良質なオーダーメイド家具を提供。内装および建具工事も手がけており、内装を意識した家具づくりが強みであった。
さらにC社は不動産賃貸仲介業も展開しており、仲介業のさらなる拡大を図っていた。A社をM&Aしたのも、A社の持つ商圏や従業員の活用によって事業をスピーディに拡大できると判断したからだ。

シナジー
A社はトラブルなくM&Aを実施し、後継者問題を解決。得意先とも安定した取引が継続できている。加えて、A社にC社の不動産事業部が統合されたことで、営業を推進できる人材が確保された。不動産の賃貸仲介業にも積極的に取り組める体制を構築し、新たな販路の拡大に注力できるようになった。
一方で、C社は、A社の社宅斡旋サービスで生じる家具の納入や内装工事を取引先に紹介。顧客との関係性を強化することができた。
事業や取引先に関する情報漏洩は、M&Aを実行する際の大きな不安材料のひとつでしょう。A社のX社長も情報の取り扱いについて懸念し、情報開示のタイミングを遅らせるなど、秘密保持の徹底にこだわっていました。その姿勢が相手企業の慎重な選定に繋がり、M&Aの成功を引き寄せたと思われます。
オンデックでは、ご要望に合わせた臨機応変な対応を心掛けています。M&Aについてお悩みでしたら、まずは気軽にご相談ください。