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M&Aガイド

【M&A即効解決FAQ】大規模M&Aと比較した中規模・小規模M&Aならではの特徴は?

M&A即効解決FAQ_M&A規模別の特徴

この【M&A即効解決FAQ】では、中小企業のM&Aに関して過去弊社に寄せられたご相談やよくあるご質問に回答する形で解説していきます。
これを機に、皆様の会社の成長のツールとして、また場合によっては皆様の会社の事業承継の一つの選択肢として、M&Aをより身近に感じていただけると幸いです。

今回は、中規模・小規模M&Aの特徴に関する3つの質問にお答えします。

【Q1】大規模M&Aと比較して、中規模・小規模M&Aにはどのような特徴があるのでしょうか?

規模別にみるM&Aの特徴を[表1]にとりまとめました。
なお、規模の分類に関しては明確な定義があるわけではありませんので、弊社独自の見解となっています。

[表1]規模別にみるM&Aの特徴

※表は横スクロールが可能です

分類 規模感 主な当事者 主なアドバイザー 特徴

大規模M&A

年商 500億円~
社員 500人~

上場企業

  • 投資銀行
  • 大手証券会社
  • 都市銀行
  • 投資ファンド
  • 企業戦略として確立されている
  • 積極姿勢を示す企業が多い
  • 戦略的売却(コア事業への集中等)が積極的に行われる
  • 業界再編が背景となることも多い
  • 高度のファイナンス・会計・法務知識が必要

中規模M&A

年商 10億~500億円
社員 30~500人

地方の有力企業
成長中の新興企業

  • 専門仲介業者
  • 地方銀行
  • 中堅証券会社
  • 都市銀行
  • 投資ファンド
  • 近年急速に認知が進んだ
  • 専門性の高いアドバイザーが増加
  • 後継者問題を背景として急速進展
  • 専門的な会計・法務知識が必要

小規模M&A

年商 ~10億円
社員 ~30人

地域の小規模企業

  • 未成熟
  • 認知が遅れていたが、ここ数年の普及は目覚ましい
  • アドバイザーの市場が未成熟
  • 潜在的な需要は非常に大きい
  • 専門的な会計・法務知識が必要
  • 情緒的要素が非常に強い

簡単に内容に触れておきますと、大規模M&Aの最大の特徴として「戦略的売却が積極的に行われる」ことが挙げられます。

例えば、2018年に大きく報道された東芝によるメモリ事業の売却は、外部から見る限りにおいてはメモリ事業自体にネガティブな事象は見受けられません。しかしながら、会社として一定の資金が必要だったことから売却を選択したことは「戦略的売却」そのものと言えます。

大規模M&Aにおいては、このような数字に基づく戦略的な経営判断など、ある種“ドライ”な世界で話が進んでいきますが、小規模M&Aに近づくほど“ウェット”な世界の話になっていくイメージがあります。この“ウェット”な世界、についての特徴は、【Q3】で回答します。

【Q2】小規模M&Aのアドバイザーの特徴はありますか?

[表1]にて、小規模M&Aの特徴として、「認知が遅れていたが、ここ数年の普及は目覚ましい」「アドバイザーの市場が未成熟」「潜在的な需要は非常に大きい」「専門的な会計・法務知識が必要」「情緒的要素が非常に強い」の5つを挙げました。

小規模M&Aを取り扱うアドバイザーに関しては、ここ数年のM&Aブームを受けて業者数が飛躍的に伸びている印象です。

たとえ中規模・小規模のM&Aであっても、M&Aアドバイザーには専門的な会計および法務などの知識が求められます。しかしながら、2005年の創業から一貫して中小企業M&A支援を行ってきた弊社としては、それらの知識を含むスキル・ノウハウを十分に有するM&Aアドバイザーは、まだほんの一握りではないかと感じています。

このような状況を踏まえて、小規模M&Aの特徴に、自戒の意味を込めて「アドバイザーの市場が未成熟」という言葉を使わせていただきました。小規模M&Aには小規模ならではの特徴もあり、そういった知識・経験・スキル・ノウハウを有するM&Aアドバイザーが増えることを望んでいます。

【Q3】小規模M&Aならではの特徴として具体的にはどのようなことがありますか?

小規模M&Aならではの特徴は「情緒的要素が非常に強い」ことです。例えば以下のような事例が生じます。
ネガティブな例になってしまいますが、後継企業(買収企業)側の不用意な一言、「工場が整理整頓されておらず乱雑に見える」「従業員の能力が低く感じる」といった発言によって、たとえそれに深い悪意がなかったとしても、成約直前にまで進んでいた話が流れてしまうこともあります。

当事者間で、この類の情緒的なボタンの掛け違いが生じてしまうと、客観的に見てどれだけベストマッチングであったとしても関係修復は困難となります。

一方で、情緒的な要素がポジティブに働く場合もあります。
例えば、複数の後継企業候補が手を挙げられた案件において、後継企業候補の代表者の人柄、雰囲気、肌合いといった情緒的要素を理由として、倍近い提示価格の差を乗り越えて成約に至ったという事案もあります。
BID(入札)によって後継企業を決めることもある大規模M&Aの世界では起こりえない、小規模M&Aならではの情緒的要素が強く出たケースでした。

以上、中規模・小規模M&Aの特徴に関する3つの質問にお答えいたしました。
弊社は、こうした特徴を持つ中小企業M&A支援に特化して実績と経験を積み上げてきております。私どもで何かお役に立てることがありましたら遠慮なくお気軽にお問い合わせください。

文=中井裕介(弊社コンサルタント)

※本記事は「経営情報誌 合理化 2019年春号」(発行:一般社団法人 大阪府経営合理化協会)への弊社コンサルタント寄稿記事を再編集したものです。記載されている情報は掲載当時のものです