譲渡側の概要
A社は、製造業者への人材派遣や業務請負を主業としていた。登録者数の確保と高い人材定着率に強みを持ち、県下では有力な人材派遣業者であった。またA社の得意先は日本を代表する製造業者が中心であり、受注環境は比較的よく、毎期安定した利益を確保していた。
譲渡側の課題
経営は順調であったものの、A社のX社長は会社の将来に不安を感じていた。A社が属する人材派遣業界は、労働者派遣法をはじめとする法律改正の影響を直に受ける業界であり、自助努力での対応に限界を感じていた。また、少子高齢化の波を受けて労働人口が減少していくことは周知の事実であり、A社単体で将来の危機を乗り越えられるのか心配であった。
オンデックとの出会い
X社長は、従業員や登録スタッフ、得意先を守るためにも、早期に資本力のある企業の傘下に入り、安定した経営基盤の中で事業を行うことがベストであると考えるようになった。ホームページ経由で複数のM&A業者と接触し、検討を重ねた結果、経験豊富なコンサルタントが在籍しているオンデックに本件を任せることとした。
買収側の概要
オンデックから複数の買収候補先を提示されたが、独占交渉に入ったのは、運送系人材派遣業を営むB社であった。B社の親会社は大手運送業者であり、B社はグループ企業へ人材派遣を行っていた。今後B社は、グループ外の企業に対して人材派遣業を展開していきたい意向があり、本件はB社にとって事業拡大の絶好のチャンスであった。
課題解決・シナジー
A社は、資本力のある企業の傘下に入り、ネームバリューを得たことで、もともと定評のあった採用力は更に強化され、経営の安定度が増す結果となった。一方B社は、グループ外企業への人材派遣にかかるノウハウを短期間で獲得したことに加え、B社親会社がA社得意先から運送・保管業務を受託するなど、グループ全体として収益力の底上げに寄与。双方にとって非常に有益なM&Aとなった。
本件は、経営が順調な優良企業からの申し出によりスタートした案件でした。一般的に経営が厳しい会社が譲渡に臨むと思われがちですが、経営が順調なうちに譲渡しておきたいという会社も増加しています。特に、人材派遣業界など業法改正が起こる業界では、将来不安を早期に回避すべく譲渡を決断されるケースがあります。本件が正にその事例であり、譲渡後X社長が安堵の表情を浮かべられていたのが印象的でした。